コロナ治療薬「ゾコーバ」感染症専門医が抱く疑問 緊急承認、事前に200万人分、咳や鼻水が対象…

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緊急承認制度とは、感染症が急激に拡大したなどの緊急時に「代替手段がないこと」「安全性が確認されていること」「国内外の治験により有効性が推定できること」などの要件を満たせば、ワクチンや治療薬などを迅速に薬事承認できる制度をいう。承認から2年以内にデータを収集し、有効性が確認できなければ承認が取り消される。

ゾコーバを緊急承認する必要があったのか岩田さんに聞くと、「個人的にはその必要はまったくないと考えている」との返答だった。

「そもそも重症化のリスクがない軽症の新型コロナの患者さんには、解熱鎮痛薬や漢方薬を用いた対症療法で十分で、ほとんどの場合は自然に治っていきます。何としてでもゾコーバを使わなければならないという理由がないのです。通常の承認であれば別ですが、緊急性は感じません」(岩田さん)

ウイルス量に関しては、ゾコーバ投与4日目でウイルス量がプラセボ(偽薬)の30分の1程度に減ったことがわかっている。「しかし、体内のウイルス量の減少することと臨床的な症状の軽快は一致しない。ウイルスが減ったからといって、早く治るとは限らないんです」と岩田さん。

臨床試験の内容からしても、緊急承認に値するものだったか疑問だ。

実はゾコーバの承認にあたって、当初は12症状が回復するまでの時間を臨床試験の評価項目としていた。だが、最終的には先の5項目(「鼻水または鼻づまり」「喉の痛み」「咳の呼吸器症状」「熱っぽさまたは発熱」「倦怠感(疲労感)」)に減らされていた。

これは普通にあることなのだろうか。

「いいえ、たいへんめずらしいです。緊急承認が必要な薬では通常、死亡や入院など重大なアウトカム(結果)が評価項目に入るものです。それが鼻水や喉の痛みなどの症状で、しかも途中で評価項目を減らしている。疑問は残ります」(岩田さん)

承認前後に計200万人分を購入決定

もう1つ疑問に残るのは、ゾコーバが緊急承認を受ける前の今年3月、すでに日本政府が100万人分を購入すると決めていたことだ。

塩野義製薬のプレスリリースには、「本年3月に厚労省との間で締結した本剤の国内供給に関する基本合意書に基づき、日本政府が100万人分を購入する売買契約を別途締結しておりますことを併せてお知らせいたします」とある。実際の契約は、7月の審議会の前日だった。

塩野義製薬プレスリリース
塩野義製薬のプレスリリース(URLはこちら)赤い下線は編集部による
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