突然の事故で妻を亡くした、参平。
悲しむ暇もないまま時は過ぎ、そのうち毎日の生活すらおろそかになった。かつては人生をかけていた仕事も、3年前に退職して今はバイト扱いだ。見かねた息子・詩郎に提案され、息子家族のもとで居候することに。
そこで荷物を整理している際に見つけたのが、妻の遺した1冊のノートだった──。
『夕凪の街 桜の国』(2003年〜)『この世界の片隅に』(2008年〜)で知られる漫画家、こうの史代が2004~2006年にかけて連載した作品が、『さんさん録』だ。
当時、いくら描いてもいっこうに速くもならず売れもしないことに対して「自信を失って落ち込んで」いた作者が、「うんと苦手なものを描いてみよう」と思い立ち、苦手な「じじい」を主人公に据えて生まれたのが本作だ(あとがきより)。
この消極的な弁とは裏腹に、作品に通底する日常生活へのこまやかなまなざしは、のちの『この世界の片隅に』にも共通する、こうの氏の作風の根幹となるものだ。
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