妻を亡くした彼がマフラーの手編みに挑んだ結果 こうの史代『さんさん録』:赤い糸

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(『さんさん録』©️こうの史代/コアミックス)

突然の事故で妻を亡くした、参平。

悲しむ暇もないまま時は過ぎ、そのうち毎日の生活すらおろそかになった。かつては人生をかけていた仕事も、3年前に退職して今はバイト扱いだ。見かねた息子・詩郎に提案され、息子家族のもとで居候することに。

そこで荷物を整理している際に見つけたのが、妻の遺した1冊のノートだった──。

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『夕凪の街 桜の国』(2003年〜)『この世界の片隅に』(2008年〜)で知られる漫画家、こうの史代が2004~2006年にかけて連載した作品が、『さんさん録』だ。

当時、いくら描いてもいっこうに速くもならず売れもしないことに対して「自信を失って落ち込んで」いた作者が、「うんと苦手なものを描いてみよう」と思い立ち、苦手な「じじい」を主人公に据えて生まれたのが本作だ(あとがきより)。

この消極的な弁とは裏腹に、作品に通底する日常生活へのこまやかなまなざしは、のちの『この世界の片隅に』にも共通する、こうの氏の作風の根幹となるものだ。

この記事の漫画を読む(9ページ)
こうの 史代 漫画家

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こうの ふみよ / Fumiyo Kouno

1968年広島市生まれ。『街角花だより』でデビュー。代表作は『夕凪の街 桜の国』(第8回文化庁メディア芸術祭大賞、第9回手塚治虫文化賞)、『この世界の片隅に』など多数。

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