需要と供給の法則を信じる人を裏切る「真の法則」 「需要と供給によって価格が決まる」というウソ

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科学の分野で「法則」という言葉が使われる場合、そこには明らかに1つの意味しかない。すなわち、自然界や人間の行動やあらゆる知識分野に存在する規則性だ。

法則とは「2つ以上の事物や要因の間に常に関係があることを示す科学的定理」である。 

「常に」そうなのか

ここで重要な点は「常に」という言葉だ。なぜなら、法則として認められるものは、普遍的に、規則的に、変わらずに起こることのみだからだ。つまり、科学分野でなんらかの法則が発見されたというのは、それが他のどんな状況とも無関係に、いつでもどんな状況でも起こる現象が見つかり、普遍的な真理が確立されたことを意味している。

しかし、「価格が上がれば上がるほど市場に出る供給量は増える」(いわゆる「供給の法則」)も、「価格が上がれば上がるほど、消費者の需要は減る」(いわゆる「需要の法則」)も正しくない。

その間違いを証明するのは簡単だ。

・「需要の法則」も「供給の法則」も実は法則ではない

まず、財の価格が上がるのと同時に生産コストが高くなれば、おそらく企業は供給量を増やさないだろう。逆に、財の価格が上がるのと同時に消費者の所得も上がったり、その代替品の価格も上昇したり、あるいはその財が流行して消費者からの人気が高まったりした場合は、需要が下がらないどころか、上がる可能性も十分あり得る。

企業の供給量と消費者の需要量の関係を定める需要と供給の「法則」は、財やサービスの需要・供給に必ず影響を及ぼす他の要因(企業側のコスト、消費者の収入、市場動向、他の財の価格など)が絶えず一定である場合にのみ成立する。そして現実の社会では、奇跡でも起こらない限り、そんなことは不可能だ。

次に、需要と供給によって価格が決まるというのはウソである。

財やサービスの価格の定め方について、従来の経済学は、需要と供給を使ったとてもシンプルな方法で示している。前述した図のように価格が上がって供給量が増えると需要が減るという両者の関係はハサミの2枚の刃のようなもので、2本の直線がある1点で交わり、その1点が供給量と需要量が一致する「均衡価格」だという。つまりそれは、企業が売ろうと思う価格であり、消費者が買ってもいいと思う価格ということだ。

問題は、その仮定自体が間違っていることだ。そのことは、これまで多くの経済学者が複雑な数学的分析を用いて立証してきたが、ここではできるだけ簡単に説明してみよう。

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