まとめると、財の価格が需要と供給の法則によって自動的に決まるという理論が現実的にウソであることは、主に次の3つの理由からである。
第1にそんな「法則」は存在しない。
第2には、需要と供給が自動的に一点で一致するために必要な諸条件が満たされていない。
そして第3には、たとえ個人レベルで可能であったとしても、市場に介入するすべての企業とすべての消費者を集合として見ると結果は異なる。
つまり、いわゆる「需要と供給の法則」は、これを固守する経済学者の頭のなかだけに存在する理論であり、彼らがそれを信じ込ませようと図ったところで、現実的には成り立たないものなのだ。
そのウソがどんな結果をもたらすのか?
「市場で起こることは法則にのっとって自動的かつ機械的に調整されている」とすることは、まさしく市場は恒久的な法則や規則性に応えているのだから、そこに誰かが介入したり手を加えたりしてはいけないと人々に信じ込ませる効果がある。
たとえば、最低賃金を上げよう、賃貸料を変えようといった市場へのなんらかの介入の動きがあった場合、それによって不利益をこうむる人はどうするか?
「人為的介入は法則に反することであり、市場に修復不可能な大きなダメージを与えかねない」と主張すればいいのだ。
逆に、団体交渉を阻止したり、解雇の規制緩和や土地の自由化を促進したりしたい場合には、「これは市場が適切に機能するために必要な措置だ」ということができる。
このウソは、実際に市場のやりとりの際に起こっていることを偽ったり隠したりするのに役立つ。一般的な財にあらかじめ決められた価格は存在しない。主体と主体の間での具体的なやりとりの結果で決まるのだ。自動化された市場が提示する結果ではなく、特定の場所とタイミングで行われる具体的な行為の結果なのだ。
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