スタバは、なぜ人種問題に踏み込んだのか 「Race Together」カップの波紋

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「これは挑発だ」とブランド関連コンサルタント業のスターリング・ブランズ社のディーン・クラッチフィールド上席副社長は言う。「成功すれば感銘を与えるだろう。目的意識が高いブランドという印象が定着する」。

社会問題に取り組むために大々的な活動を展開するというのは、企業として決して珍しくない。たとえばコカ・コーラ社は、1970年代からCMソング『愛するハーモニー』で平和と調和を推進しようとしてきた。

過去にも社会問題に積極的だったスタバ

その一方でシュルツCEOの場合は、米国内の諸問題に対し、会社としても彼個人としても物申すという傾向が強まっているようだ。ただし本人は、政治活動ではないかというそしりを受けても、相手にしていない。

彼は2013年10月に連邦政府機関が一部閉鎖されたとき、連邦議会に対して年内に予算案を可決するように陳情する活動を始めた。スタバ店内への銃砲類の持ち込みを禁じたこともあれば、復員軍人の支援、それから同性愛者の結婚を積極的に支持してもいる。

「スターバックスの歴史とそのブランドのあり方について振り返ってみれば、重要な社会問題に対して意見を表明してきたことがわかる」と、ビジネスコンサルタントのジム・ステンゲル(元P&G最高マーケティング責任者)は指摘する。ただし今回は、消費者の願望と衝突するおそれがあるという。つまり、注文をしたら無言で待って、数分後には店を出て行くという願望が満たされないことによってだ。「バリスタと消費者の間で話し合いをさせようという戦術だが、少なくとも消費者の半数はさっさと店を出て行こうとするものだ」。

人種について話せと職員に指図しているわけではない、という点に引っかかるという意見もある。「バリスタたちがどんな研修を受けて会話に備えているのか、ほとんど明らかにされていない」と、全米で人種間の平等と公正を求めて活動する非営利機関レース・フォワードのリンク・セン専務理事は言う。「積極的な取り組みは高く評価するが、その構想には欠けている部分があると思う」。スタバ社広報担当によると、特に職員に正式の訓練はしていないという。

とりあえずの効果は話題をまいたこと

企業として財務上は順調のようだ。12月28日終了の四半期決算で、9億1550万ドルの営業利益を計上した(前年同期は8億1350万ドル)。売上高は前年同期比13%増の48億ドルだった。

それでも高級路線での競争が激化するなか、新たな収益源を模索しているところだ。今回の人種問題に関する広報活動には、競合他社を引き離すという目的があったのではないかと、ブランディングを専門とする南カリフォルニア大学のジーテンドル・セーデブはみる。「会話を始めるというより、これはコーヒー戦争だ。ブランドと文化の関連性を際立たせることが唯一の目的だろう」。

もしも注目度を高めることが目的だったなら、すでに大成功している。18日にはツイッターでハッシュタグ#RaceTogetherがトレンディング・トピックの首位に立った。

はたしてこの運動はソーシャルメディアで発展するだろうか。あるロウアー・マンハッタンのスタバ店内では、多くの客のカップにRace Togetherのシールが貼られていた。だが取材に応じた客の中で、その意味を理解していた人はほんの少ししかいなかったようだ。客のひとり、イーゴリ・サントス(44)はこう答えた。「ただ貼っただけで説明はなかったよ。単なる広告かと思った」。

(執筆:Sydney Ember記者、翻訳:石川眞弓)

(c) 2015 New York Times News Service

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