野田元首相が今語る「12年党首討論→解散」の本音 結果は惨敗、それでも論破より合意を優先した訳

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井手:初動は大盤振る舞いも仕方なかったという評価がありましたが、ただ本当は、われわれは社会全体で考えるべき重要な選択をその最初に突きつけられていると思うんです。人間の自由と人間の命と、どちらが大事かという問いを。

高齢者や既往症のある方がコロナに感染すると亡くなってしまうので、その命を守るために国民は自粛しました。小中学校も休校にした。命を守る選択をしたわけです。そのかわり人間の自由はかなり傷みました。移動の自由も、経営する自由も、学校で学ぶ自由も制約された。命か自由かが問われていました。

極論ですけど、もうあと何年かで亡くなる方の命と、未来の子どもたちの学びの場は、いったいどちらが大事なのか。これは、本当は議論されなければいけなかった、極めて重たいテーマだと思います。

例えばスウェーデンでは、学校を休校にしなかった。子どもの学びは何があっても守られなければならない。そのかわり感染者数は増えていった。日本とスウェーデンのどちらが正しかったか、ではありません。私たちはそういう議論をしたのか、ということです。いつ、誰がその議論をしたのかわからないままに今まできている。

問われているのは「経済」か「民主主義」かの二者択一

井手:そして今問われているのは、経済か民主主義かの二者択一です。経済を良くするために以前のGo Toキャンペーンのようなことをやり、旅行支援も始める。現金をばら撒いて消費も伸ばそう、と。

でも、予備費でそんなことをしていいのか。補正予算にコロナと関係ないものを入れていいのか。基金を乱立して議会統制がきかなくなっていいのか。国の財政はいったいどうなるのか。そういった、本来きちんとしなくてはいけない議論が、いまだに行われていないように見えます。

野田:ウィズコロナとゼロコロナの論争はあったと思いますが、今おっしゃったような命か自由かという、人間の価値観に根ざした掘り下げには至っていなかったと思います。同時に、それぞれの手段についての深い議論もない。

実は政府は新型コロナワクチンを8億8000万回分購入しています。1億2000万人の日本人が全員4回打っても4億8000万回。なぜ8億8000万回分なのか、国会で質問しても、政府はしどろもどろで明快な回答ができない。ワクチンの単価も「秘密契約で公表できない」と。それを答えられない政府って何なのかと思いますね。

(構成:勝木友紀子)

第2回に続く

井手 英策 慶應義塾大学経済学部教授

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いで えいさく / Eisaku Ide

1972年生まれ。東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。日本銀行金融研究所、東北学院大学、横浜国立大学を経て、現在、慶應義塾大学経済学部教授。専門は財政社会学。総務省、全国知事会、全国市長会、日本医師会、連合総研等の各種委員のほか、小田原市生活保護行政のあり方検討会座長、朝日新聞論壇委員、毎日新聞時論フォーラム委員なども歴任。著書に『幸福の増税論 財政はだれのために』(岩波新書)、『いまこそ税と社会保障の話をしよう!』『18歳からの格差論』(東洋経済新報社)ほか多数。2015年大佛次郎論壇賞、2016年慶應義塾賞を受賞。

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