「社会保障と税」「金融と財政」の一体改革が必要
井手:今の状況を変えていくのに、増税は避けて通れない。財政健全化だけではなくて、人々の受け取る部分もきちんと増やさなくてはいけない。私はずっとベーシックサービスを主張していまして、医療、介護、教育といったサービスを無償化して人々の生活保障をきちんとやりましょう、そのために増税しましょうと主張してきました。
ベーシックサービスの提供によって税の痛みが和らぎ、税は取られたけれど、暮らしが楽になった、という成功体験。それがあれば、次は税金の一部を財政健全化に回すことへの合意形成がしやすくなる。入り口はサービスで、だんだん財政健全化のほうにウエイトを置いていく。それが大事だと思っています。
ただ、今の金融政策の状況、利上げができず、円安が進んで物価が上がり、またお金をばらまくという悪循環。これは財政の不健全さと表裏一体です。健全財政と今の金融政策との関係をどう評価されますか。
野田:「社会保障と税の一体改革」以降、社会保障改革の議論はあまり進んでいない。効率化、重点化ももちろんですが「ベーシックサービスを支える財源としての消費税」というような、くくり方を考える第2段階の改革をやるべきだと思うんです。
同時に、もう1つ大事になってきたのが、「金融と財政の一体改革」。金融政策の正常化、出口の議論と、財政健全化の入り口の議論は完全にセットだと思います。日銀が事実上財政ファイナンスをしているがゆえに財政規律が緩んでいて、財政健全化の入り口にも立つことができない。
ただ難しいのは、金融政策の正常化を進めるには、市場との対話に相当神経を使う必要がある。今の日銀総裁のような発言の仕方ではたぶんだめでしょう。
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