野田元首相が語る「追悼演説」に秘めた政治の本質 真剣な議論のなかで、折り合うところを求める

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
野田佳彦元首相と井手英策・慶應義塾大学教授の対談第3回です(写真:尾形文繁)
参院選遊説中に、凶弾に倒れた安倍晋三元首相。その追悼演説を引き受けたのが、野田佳彦元首相だ。10月25日の衆院本会議で行われ、終了後も議場の拍手が鳴りやまず、与野党を超えて称賛する声が相次いだ。
野田氏と安倍氏は1993年の衆院選で初当選した同期であり、民主党政権だった2012年には2人の党首討論をきっかけに衆院解散、総選挙が行われ、自民党が政権に復帰した“因縁”もある。
それから10年経った今、野田氏は日本の政治をどう見ているのか。慶應義塾大学の井手英策教授が聞いた。(インタビュー日は11月18日、全3回の3回目)
第1回:野田元首相が今語る「12年党首討論→解散」の本音
第2回:防衛費も国債?日本の財政規律が緩んだ根本原因

「社会保障と税」「金融と財政」の一体改革が必要

井手:今の状況を変えていくのに、増税は避けて通れない。財政健全化だけではなくて、人々の受け取る部分もきちんと増やさなくてはいけない。私はずっとベーシックサービスを主張していまして、医療、介護、教育といったサービスを無償化して人々の生活保障をきちんとやりましょう、そのために増税しましょうと主張してきました。

ベーシックサービスの提供によって税の痛みが和らぎ、税は取られたけれど、暮らしが楽になった、という成功体験。それがあれば、次は税金の一部を財政健全化に回すことへの合意形成がしやすくなる。入り口はサービスで、だんだん財政健全化のほうにウエイトを置いていく。それが大事だと思っています。

ただ、今の金融政策の状況、利上げができず、円安が進んで物価が上がり、またお金をばらまくという悪循環。これは財政の不健全さと表裏一体です。健全財政と今の金融政策との関係をどう評価されますか。

野田:「社会保障と税の一体改革」以降、社会保障改革の議論はあまり進んでいない。効率化、重点化ももちろんですが「ベーシックサービスを支える財源としての消費税」というような、くくり方を考える第2段階の改革をやるべきだと思うんです。

同時に、もう1つ大事になってきたのが、「金融と財政の一体改革」。金融政策の正常化、出口の議論と、財政健全化の入り口の議論は完全にセットだと思います。日銀が事実上財政ファイナンスをしているがゆえに財政規律が緩んでいて、財政健全化の入り口にも立つことができない。

ただ難しいのは、金融政策の正常化を進めるには、市場との対話に相当神経を使う必要がある。今の日銀総裁のような発言の仕方ではたぶんだめでしょう。

次ページでは、どうすればいいのか?
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事