今の予算は税が前提になっていない
井手:自治体の現場では、国からコロナ関連の事務的な仕事や現金給付が次々に降ってきて、本来やるべき通常業務が先送りになっている。先ほどの予備費の問題も、膨らむ補正予算に加えて、国庫債務負担行為をどんどん使うようになっている。防衛費増額も将来の負担を増やしますし、目に見えにくい形で将来の負担がどんどん増えている。この数年の間に、民主主義の危機ともいうべき状況が生まれているように感じています。
今の民主主義の質について、どうお感じですか。
野田:基本中の基本は財源です。さまざまな政策があってしかるべきですが、今はいずれも財源の議論がない。
コロナ対策も、防衛費も、子育て支援もどれも大事です。ですが、財源の議論とセットでなければおかしい。単に国債を増やせばいいというものではないんです。
すべて「財源なくして政策なし」だと思うんですが、ここ2、3年はそれが極めておろそかになっている。コロナ禍だから、ウクライナ侵攻があったから、物価高だからしょうがない、ではなく、どんな場面でも財源を念頭においた政策でなければ、規律は緩んでいくばかりだと思います。
井手:まず大前提は税金ですね。無駄遣いをすると、いつか必ず税負担が上がる。それは嫌なので、何が必要で何が不要なのかを話し合わなければいけない。さらにそれを誰から取るのか、どの税で取るのか、税率を何%にするかも皆で話し合わないといけないですね。
この話し合いの積み重ねのことを「財政民主主義」という。これが、民主主義の基本ですね。国会の1年の仕事のほとんどは、結局予算をやっているわけですし。
ところが、今はもう税が前提になっていないので、話し合う余地がない。要不要の検討もないまま、次から次に予算に盛り込まれていく。野党議員にも反対しない人がけっこういますね。「皆、喜ぶんだし、お金をもらえるならいいだろう」と。
野田:むしろ競争してしまっている。
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