野田:自分ではあまり保守革新で分けていないんですが、よくそう呼ばれますね。外交でも安全保障でも現実的な路線を取っていましたから、保守だと言われるんでしょう。また、日本の長い歴史のなかで移り変わってきた価値観を大きく包み込む、穏健な包容力を大切にしているという意味では保守かもしれません。
明治以降の、極めて短い歴史スパンの価値観で「これじゃなきゃだめだ」と決めつける保守とは違います。そういう人たちは、選択的夫婦別姓はだめだと言いますが、私は賛成しています。
源頼朝の奥さんが北条政子で違和感ないでしょう。実際は、当時女性は姓を名乗っていませんでしたが、夫婦同姓というのも明治以降にできた家族観です。選択肢はもっといろいろあっていいんですよ。
井手:明治以降の底の浅い保守主義ではなくて、日本の長い伝統を大切にしつつ、例えば夫婦別姓も、昔そうだったのなら戻していいじゃないか、変えていいじゃないかということですよね。
日本の守るべき価値とは
井手:先ほどの外交安全保障の話でいうと、スウェーデンを保守国家と呼ぶ人はいませんよね。でも、本当に小さな国ですから、外交も安全保障も非常に重要で、戦後、積極的外交政策と呼ばれる政策を取り、非武装ではなく、重武装中立。重武装国家なんです。外交安全保障の方針から、もし先生が保守主義と呼ばれるなら、スウェーデン人は皆保守主義者ですね。
エドマンド・バーク(イギリスの政治思想家)も、カール・マンハイム(ハンガリーの社会学者)も、保守主義者とは本来、守るべき価値を持っていて、その守るべきものを守るために、変えるべきことを変えていく人たちだ、大切な価値を、生き生きとした現実に合わせていくことのできる人たちだと言っているんですよね。
フランスはよく「自由、平等、博愛」と言います。アメリカは「自由の国アメリカ」、北欧諸国だったら「社会民主主義」。彼らはそういう守るべき価値を持っている。その意味では全員保守主義者です。その価値を長く生き続けさせるために、時代に合わせて何かを変えていこうとする。先生のおっしゃっていることは、そちらに近い印象を持ちました。
では、この国には何があるんでしょう。この国のナショナルアイデンティティって、いったい何なんだろうというのを、今、考えさせられました。
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