野田元首相が今語る「12年党首討論→解散」の本音 結果は惨敗、それでも論破より合意を優先した訳

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野田:おっしゃるとおり、結果は大敗です。ですが、与党と野党第1党、第2党が、ネクストジェネレーション、次の世代の日本のことを考えた政治決断を合意できたことに意義があった。

野田佳彦(のだ・よしひこ)/1957年生まれ。1980年早稲田大学政治経済学部卒業後、松下政経塾、千葉県議会議員を経て、1993年衆議院議員初当選。2010年財務相、2011年首相などを歴任。2020年立憲民主党最高顧問(写真:尾形文繁)

さらに、国民に理解してもらうための条件整備もできたと思っていますので、私自身としては、悔いはありません。

ただ、同志をたくさん失いました。国会に戻ってこられないままの人たちもいる、私はずっとその責任を負って生き続けなければいけない。

井手:今思うとねじれ国会の影響は大きかったわけですが、そのねじれを生んだ参院選も、菅直人元首相が掲げた消費税が敗因といわれています。

あの党首討論を生んだ厳しい問題はすべて消費税につながっている。あえて言えば、敗北の淵源ともいうべき消費増税、社会保障と税の一体改革にご自分の政治生命をかけて取り組まれたことに、どんな思いをお持ちでしょうか。

野田:国民の不安で一番大きいのは社会保障分野です。老後の不安。医療、年金、介護の不安。子育てに不安を持っている若い人たちもたくさんいる。子どもを産んでいいのかというところから不安があるわけです。

国民の幸せな人生の前提として、その不安をなくしていくことが必要です。ただ、それを赤字国債によって次世代に負担を先送りしていくやり方はもう取るべきではない。不安をなくすために、皆で負担を分かち合い、支え合っていく。オールジャパンで不安をなくしていこうじゃないかと。そのために消費税を充てるという判断をしたわけです。

「受益と負担の相関を考えるべきだった」

井手:当時、消費税を5%引き上げる分はすべて社会保障に充てると説明されていました。

専門は財政社会学、博士(経済学)。1972年生まれ。東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。日本銀行金融研究所、東北学院大学、横浜国立大学を経て、現職。総務省、全国知事会、全国市長会、日本医師会、連合総研等の各種委員なども歴任(写真:尾形文繁)

ですが、現実には4%分、8割が事実上の借金の返済で、人々の生活、社会保障の拡充に向かったのは1%分、2割。この割合についてはどうお考えですか。

野田:血が流れているなら、まず止血しなければいけない。まずプライマリーバランスの黒字化を図って赤字の垂れ流しをやめ、財政健全化の入り口に立つ。そこまでは4対1の比率でやり、そのあと社会保障の比重を高めるのが順番として妥当だと。プライマリーバランスを黒字化できないまま対GDP比債務残高が膨らんでいくことは絶対に止めなくてはいけない。当時はそう考えていました。

ただ、今になってみると、最初に受益と負担の相関関係が体感できなければ、そのあと負担をお願いするときのハードルは非常に高くなってしまう。1対4では社会保障の充実をわかってもらえない。

例えば子育て支援をもっと手厚くして「負担は増えたけれど、一方でちゃんと恩恵があった」と実感してもらえれば、次にお願いするときの納得度が高まったはずです。その国民感情を理解できていなかった。今、私はそのことを猛省しています。もっと受益と負担の相関を考えるべきでした。

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