「ホテル日帰り50万円」で客が納得する提案方法 高いか安いかの価値判断は買い手が決める

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付加価値をつくる人になるためには、まず「価値とは何か?」をきちんと理解している必要があります。私の定義は、「価値とはお客様(相手)が感じる(決める)ものである」です。この定義を理解するうえで、わかりやすい実例があるので紹介しましょう。

私が10年目の結婚記念日を迎えた際のエピソードです。10年間苦労をかけた妻に感謝の気持ちを込めて、2人きりの時間をとって特別なお祝いをしようと思った私は、大阪市内にある某一流ホテルを会場に選びました。そのホテルは結婚式を挙げた場所でもあったので、原点に戻って同じ場所で、デイユース(日帰り)プランで豪華な時間を過ごそうと思ったのです。

ネットで調べたところ、ホテルの1階にあるイタリアンレストランで食事するプランなら5万〜6万円で予約できることがわかりました。しかし、同じホテルに、このお店の他にフレンチレストランがあったので、食事するならこっちのほうがいいなと思った私は、ホテルに電話して、「このお店で食事する場合のプラン料金は、いくらになりますか?」と聞いてみました。

すると、電話に出たホテルスタッフは、お客様に絶対に言ってはいけない一言を添えて、次のような説明をしてくれたのです。「お客様、そちらのプランは少し高くなっておりまして、16万円するんですが……」。

みなさん、この状況でホテルスタッフが絶対にお客様に言ってはいけない言葉が何だかわかりますか? そう、「高くなっておりまして」という一言です! この「高くなっておりまして」という言葉を聞いた瞬間、次のような思いが頭をよぎったのです。

サービスの価値を決めるのは買い手

これは妻と私の大事な結婚記念日だ。私たちの結婚記念日に、いくらくらいのお金を支払ってどんなお祝いをするか、それが高いか安いかを決めるのは私たちのはず。なぜ売り手が勝手に「高い」と、サービスの価値を決めてしまうのだろう? このホテルでは、私たちが求める価値あるサービスは提供してもらえそうにないな。

ホテルのデイユースで16万円という金額は、確かに安いとは言えないかもしれません。普通に考えたら高額でしょう。しかし、私たちにとっては人生に一度しかない大切な結婚10周年記念日です。少々費用が高くついてもいい、妻に最大の感謝の気持ちを伝えたい、と思っているのです。「私自身の価値観で決めさせてほしい」と思うのは当然ではないでしょうか。

結局、私は、「ああ、そうなんですね。わかりました、じゃあちょっと検討させていただきますね」と答えましたが、部屋の予約はしたものの、結局、ホテルのレストランは使わずに他の飲食店を使用することにしました。

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