インド進出の寿司チェーンがまずまず成功のワケ 「小僧寿し」をイメージして2011年に立ち上げた

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インドのムンバイ、デリーなど4都市で10店舗を展開する寿司チェーン「Sushi And More」。「ハレの日の食」としての華やかさやヘルシー食材を売りに、コロナ禍のインドで大きく売り上げを伸ばした(写真:Sushi And More)
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最近、インドについてのメディア露出が高まっている。

一つの理由として挙げられるのが、2022年7月に国連が発表した「世界人口推計」だ。現在、人口第1位は中国で14億2600万人、次ぐインドは14億1700万人だが、2023年にもインドが中国を抜き、人口がもっとも多い国になると推計。さらに2050年には16億6800万人になるという。またインドの場合とりわけ15〜64歳の生産年齢人口が多いことも特徴だ。

若い人口の多さはビジネス可能性の大きさでもある。そのため、投資先やビジネス開拓地としての、インドへの注目が世界的に高まっているのだ。
今回はこうしたインドの可能性に早くから着目し、現地で寿司の宅配ビジネスを軌道にのせたグローバル起業家の小里博栄氏に、インドにおける食ビジネスについて聞いた。

小里氏の渡印は2007年。日本食材の輸出入のほか、経済産業省などの日本の省庁と連携して日本食品のPR事業に携わった。

「気軽に食べられる寿司」のビジネス

一方で2009年から着手したのが「気軽に食べられる寿司」のビジネスだ。当時、和食は高級で、富裕層や日本からの駐在員が顧客の中心だった。和食の代表格とも言える寿司を、現地の人が気軽に食べられるようにしたいと考えたのだ。

イメージしていたのは、自身が幼い頃親しんだチェーン「小僧寿し」だったそうだ。回転寿司などがない当時、寿司は大人にとってもごちそうだ。

子どもの口に入るのは冠婚葬祭や記念日などのハレの機会のみだった。
そこへ、低価格の持ち帰り寿司という新しいビジネスモデルを展開したのが小僧寿しだ。小里氏が生まれ育った神戸の実家近くにも出店しており、弟とともに小遣いを持ってよく通ったという。

Sushi And Moreの寿司は日常食として利用されるほか、結婚式やホームパーティでのケータリング需要も高いという(写真:Sushi And More)

そんな郷愁も込めて小里氏が立ち上げた寿司レストランは、2011年より「Sushi And More」のブランド名で展開した。

インドの人にとって馴染みのない寿司に気軽に親しんでもらえるよう、また、価格を抑える意味もあって、ネタはツナマヨネーズやえび天ぷら、ノルウェーのサーモンなどを中心にした。

またベジタリアンが半数を占めるというインドのお国柄も考慮し、アボカド、チーズ、豆腐といったベジタリアン向けのネタも充実させた。米は現地で作っている日本米を使っているそうだ。

開店当初は6〜8ピースの単位で販売していたが、現在は量にして半人前ぐらいの4ピース350ルピー(約580円・12月6日時点のレート)で販売。メニューにはサラダやフライといったサイドディッシュも並んでおり、1人当たりの単価は1400〜1500円ほどとのことだ。

現在までの間にムンバイ、デリー、グルガオン、パンガロールの4都市に10店舗を展開、年間12万食を提供している。

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