インド進出の寿司チェーンがまずまず成功のワケ 「小僧寿し」をイメージして2011年に立ち上げた
2009年に始めて13年。インド上陸当初からだと15年だ。その間に展開したのが10店舗というと、日本の感覚では「遅い」と思えるかもしれない。しかしこれは、市場が存在しないゼロからのスタートであったこと、そして、「インドだから」という理由が大きい。インドで成功している企業として有名なのが自動車メーカーのスズキだ。
「マルチスズキを創立した鈴木修氏自身も『インドのビジネスには15年時間がかかる』と語っている。この言葉が頭にあり、長くかかることは覚悟していた」(小里氏)という。
また、転機となったのがやはりコロナだったそうだ。
「外出制限が課されたのでデリバリーが命だったし、インドの人も毎日カレーを食べるわけにいかない。そこでうちの店でもデリバリーやテイクアウトを打ち出した。結果的に売り上げがそれまでの倍になった」(小里氏)
デリバリーやテイクアウトが増え、外食できない代わりに少しハレ感のあるものが欲しくなるという、日本と同様の現象が起きたわけだ。さらに寿司は現地ではヘルシーというイメージが強い。このことも、外出制限が続く中で売り上げが高まった理由の一つだ。
しかし、「棚からぼた餅」だったわけではない。小里氏自身も198日間の外出制限に置かれた中で、一から店の見直しを行ったそうだ。
「コロナ禍に突入した当時は7店舗を展開していたが、コロナの直撃を受けた。廃業も考えたが、供給責任がある以上それはできない。そこでデリバリーやテイクアウトに切り換えるとともに、メニューを再構築し、ブランディングも見直した」(小里氏)
インスタグラムにも力を入れ、6カ月でフォロワー数を700人から2000人まで増やした。その結果が、売り上げ倍増だったのだ。
現在は7店舗から10店舗へと展開が広がり、「デリバリー・テイクアウト」「イートイン」「会員制クラブへの職人派遣」の3業態で事業を行っている。デリバリー・テイクアウトがメインとなっているそうだ。
大きな差別化ポイントは「安定した品質」
小里氏によると、10店舗は寿司のチェーンとしてはもっとも多く、さらに複数都市で展開しているチェーンはほかにないという。インスタグラムに寄せられる客からの声も「味がよい、価格も安い」と評価が高い。
理由はいくつかあるというが、もっとも大きな差別化ポイントは安定した品質だった。日本のチェーンではよく知られた概念だが、小里氏がビジネスを始めた当時、そうした価値観はインドにはなかったからだ。
品質を安定させるためには人材教育が必須だ。小里氏はそこで、商品のパッケージに発注者の名前を記し、さらに調理したスタッフがサインをするよう取り決めた。いわゆる「相手の顔が見える」状態にし、責任感を持ってもらう工夫だ。
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