インド進出の寿司チェーンがまずまず成功のワケ 「小僧寿し」をイメージして2011年に立ち上げた
日本のデリバリーにおいても、「お客の顔が見えない」ことにより、お客の声が届きにくく「冷めている」「盛りつけの崩れ」「具材の入れ忘れなどのミス」などの不満要因につながりやすくなると言われている。お客への意識は、インドにおいてまさに重要だったようだ。
「もちろん文化も違い、コミュニケーションの問題もいろいろあった。給料を渡した次の日に従業員が消えたということもある。しかし今は29人の従業員がいて、長く務めてくれている者も多い。中には15年になる者もいる。寿司チェーンのパイオニア、市場をリードするブランドとして、プライドを感じてくれているのではと考えている」(小里氏)
華やかで驚きのあるビジュアルを意識
その他、こだわったのが見た目の美しさだ。容器の蓋をあけたときに思わず声が上がるような、華やかで驚きのあるビジュアルを意識。持ち帰り用の紙袋には「I LOVE SUSHI」のロゴを入れた。もともと寿司は「ハレの日の食べ物」。寿司を通してインドの人々の生活に幸せを届けたいという同チェーンのブランドコンセプトが、美しいビジュアルには込められているわけだ。
ビジネスの達成度を0から100で表した場合、同チェーンの場合はやっと0から1に到達したところだと小里氏は語る。100は目標店舗数を表す数字でもあるという。
「100店舗は視界に入ってきた。しかし出店を急ぐのではなく、目の前のビジネスを一つひとつ確実に行っていく」(小里氏)
寿司レストランから派生した事業の多角的な展開も検討している。「人材育成」「パッケージ商品」の2つだ。これまで寿司の料理教室を開催する中で、人材育成ビジネスの需要は高いと見ている。またパッケージ商品は、ソースなどメニューで使っている食材を商品化し市販することを指す。例えば、からあげにつける「マスタードしょうゆディップ」を売り出すことを検討中だそうだ。
以上のように、紆余曲折ありながらも成果を挙げている小里氏のインドビジネス。小里氏によると、インドの人口は消費力の高い中間層が厚く、車、デジタル機器、食などさまざまな市場で可能性があるそうだ。
「苦労は山ほどあった。しかし、自分自身が過去の苦労を忘れる性格」という小里氏。オックスフォードなど英国の大学に留学し、困難に挑戦する姿勢を身につけた。ヴァージン・グループやダイソンの日本上陸マーケティングを担当し、成功に導いた経歴もある。新たな市場を開拓するビジネスに魅力を感じるという。そんな小里氏にとって、インドは金の鉱脈のようなものだったわけだ。
経験者としてビジネスのハードルとなり得ることを挙げるなら、インフラの不整備だという。
「ショッピングモールの一部の店で起こった火事が原因で、モール全体が6カ月閉店しなければならなかったことがある。こうした不可抗力でビジネスが中断してしまうリスクはまだある」(小里氏)
インドはGDPがイギリスを抜き世界5位。購買力平価GDPは日本より高く、世界3位だ。経済成長率もコロナを経てV字回復を果たした。ベンチャー企業の起業が盛んで、小里氏によると2022年中に100を超えるユニコーン企業が生まれていると予測されている。ビジネスマインドが高く、失敗に寛容な国柄もその土壌となっているという。
課題は多いだろうが、成長するエネルギーとビジネス可能性に満ちている国、インド。日本が学ぶべきことは多そうだ。
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