「アバター2」が2700億円売り上げないと困る理由 これまで達成できた映画は前作などわずか5本

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20億ドルの壁を越えられるかどうかは、今後にも大きくかかわってくる。キャメロンは、『アバター2』の後に、あと3本、続編を計画しているのだ。脚本は5作目まで執筆が完了しており、3作目は『アバター2』と同時に撮り終えている。

公開は、2024年、2026年、2028年と、2年おき。これだけの製作費を投資するものを、これだけ長い期間にわたって作り続けるには、観客を強く惹きつけ続けるものでなければならない。そしてそれは決してたやすいことではない。

たとえば、やはり大型予算をかけたシリーズである『ファンタスティック・ビースト』も、1作目の北米興収が2億3400万ドル、2作目が1億5900万ドル、3作目が9500万ドルとどんどん下がってきて、予定通りあと2本の続編が作られるのか、不透明になっている。

最終5作目のラストに何があるのか?

そんなハリウッドの現実を十分にわかっているキャメロンは、『アバター2』の成績がかんばしくなかった場合、3作目で終わらせる可能性もあると語っている。だが、5作目まで全部の脚本を読んだクオリッチ大佐役のスティーブン・ラングは、筆者とのインタビューで、「最後まで読み終わった時に泣いた」と語った。

そんなにすごい話なのであれば、ぜひ最後まで見たい。本来のラストがどうだったのかと想像するというのは、あまりにも残念だ。そのためにも、『アバター2』は大ヒットしなければならないのである。

おそらく、それは達成されるのではないか。パンデミックで配信が勢いを伸ばしてきた中、今年は『トップガン マーヴェリック』が劇場で大ヒットし、人はまだ映画館で劇場体験をしたいのだということをあらためて証明したばかりだ。

『アバター2』も、リビングルームのテレビで見るべき映画ではない。できるだけ大きいスクリーンで、3Dメガネをかけて、ほかの人たちと一緒に没入したい映画だ。この冬、そのために映画館に出かけていく人は、果たして世界にどれだけいるのか。脚本も完成し、公開予定日まで決まっているシリーズの将来がどうなるのかは、今、すべて観客に委ねられている。

猿渡 由紀 L.A.在住映画ジャーナリスト

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さるわたり ゆき / Yuki Saruwatari

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒業。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場リポート記事、ハリウッド事情のコラムを、『シュプール』『ハーパース バザー日本版』『バイラ』『週刊SPA!』『Movie ぴあ』『キネマ旬報』のほか、雑誌や新聞、Yahoo、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。

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