防衛費の財源を「増税」で賄うのは不可能なワケ 資本主義以前の「前近代的な発想」をやめる
この貨幣循環の過程から、いくつか重要なことが確認できる。
① 銀行制度があるおかげで、企業は、収入を元手にしなくても、銀行が「無から」創造した貨幣を得て、支出を行うことができる。
② 貨幣とは負債であり、貸し出しによって創造され、返済によって破壊される。したがって、貨幣が流通するためには、債務を負う企業が存在していなければならない。もちろん、個々の企業にとっては、負債は返済すべきものであろう。しかし、経済全体で見れば、すべての企業が負債を完済すると、貨幣が消滅して経済が成り立たなくなってしまうのである。
信用貨幣論という正しい貨幣理解
さて、この資本主義における貨幣循環の仕組みは、政府に対する貸し出しに関しても、同じように作用する。
まずは、政府の需要がある。そして、中央銀行が政府に貸し出しを行う。ここで、貨幣が「創造」される。
政府は、創造された貨幣を支出し、民間部門に貨幣を供給する。そして、政府は、課税によって民間企業から貨幣を徴収し、それを中央銀行に返済すると、貨幣は「破壊」されるのである。
このように、貨幣循環の過程は、貸し出し先が政府の場合も、企業の場合と基本的に同じである。
ただし、企業と政府とでは、大きな違いがある。企業に貸し出しを行うためには、その企業に返済能力がある必要がある。しかし、近代国家における政府は、強力な徴税権力を有しており、返済能力は確実にある。したがって、中央銀行は、政府の需要に応じていくらでも貨幣を創造し、供給することができる(日本銀行による国債の直接引き受けは原則禁止されているが、市中消化の場合でも、基本的な原理は同じである。『目からウロコが落ちる奇跡の経済教室【基礎知識編】』参照)。
ここから、やはり次の結論が導き出せる。
① 中央銀行制度があるおかげで、政府は、税収を元手にしなくても、中央銀行が「無から」創造した貨幣を得て、支出を行うことができる。
② 貨幣とは負債であり、貸し出しによって創造され、返済によって破壊される。すなわち、政府が国債を発行して債務を負うことは、貨幣の「創造」である。そして、政府が税収によって債務を返済することは、貨幣の「破壊」である。
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