防衛費の財源を「増税」で賄うのは不可能なワケ 資本主義以前の「前近代的な発想」をやめる
例えば、拙著『世界インフレと戦争』では、やはりシュンペーターを先駆とし、主に欧州大陸で発達した「貨幣循環理論(Monetary Circuit Theory)」をも参考にした。
以下、貨幣循環理論を簡単に紹介しておこう。
「貨幣とは何か」という根本論から考える
貨幣循環理論は、MMT同様、「貨幣とは何か」という根本論から出発する。
そもそも、貨幣とは「負債(借用書)の特殊な一形式」である。これが正しい貨幣概念であり、「信用貨幣論」と呼ばれている。
信用貨幣論によれば、民間銀行は、貨幣を創造することができる。すなわち、民間銀行は、貸し出しを行うことによって、預金(負債)という貨幣(預金通貨)を生み出すのである。これを「信用創造」と言う。
通俗的には、民間銀行は、企業や家計から預金を集めて、それを又貸ししているものと信じられているが、これは誤解である。実際には、民間銀行は、企業等に貸し出しを行うことで、預金という貨幣(預金通貨)を生み出している。
例えば、銀行Aは、1000万円を借りたいという企業Bに対して貸し出す際、単に企業Bの口座に1000万円と記録するだけだ。その瞬間に、1000万円という預金(貨幣)が「無から(ex nihilo)」生み出されるのである。
そして、企業Bが収益を得て、借りた1000万円を銀行Aに返済すると、1000万円という貨幣は消滅する。
このように、貨幣とは、民間銀行の貸し出しによって「創造」され、民間銀行への返済によって「破壊」されるのである。
「貨幣循環」は資本主義の基本原理
さて、貨幣は銀行の貸し出しによって「創造」されるのであるから、貨幣が創造されるためには、貸し出し先となる企業の資金需要を必要とする。
ということは、貨幣を創造するのは、究極的には、企業の需要であるということになる。
もちろん、貸し出し先の企業に返済能力がなければ、銀行は貸し出しを行えない。だから、銀行は厳格な与信審査を行う。だが、企業に返済能力がある限り、銀行は企業の需要に応じていつでも貸し出しを行う(貨幣を供給する)ことができるのだ。
まとめると、貨幣の創造の出発点には、企業の需要がある。
企業の需要があって、民間銀行が貸し出しを行うことで、貨幣が創造される。その貨幣が民間経済の中で使われて、循環する。最終的には、企業等が収入を得て貨幣を獲得し、銀行に債務の返済を行うことで消滅する。
これが資本主義の基本原理とも言うべき「貨幣循環」である。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら