インフレでも15~25%「コスト削減」ができる理由 賃料、通信費、物流費の下げ余地は大きい

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一方で、現場の責任者や担当者にとって、外部のコンサルタントによる現場の見直しは歓迎すべきものではありません。現場の協力や理解が得られずに見直しの対象外となってしまうことも少なくありません。むしろ、関連する事業部や現場担当者は“他人の介入に対する反発”や“現状と自己の正当化”という形で、コスト適正化プロジェクトに対して後ろ向き、または反対であることが多いのです。

経営層が「外部のコンサルティング会社を使ってでも改善したい」という意向を示しても、現場から抵抗があるということは、通常、社内の自助努力でコスト削減を推進することがいかに困難かを物語っています。では、コスト適正化プロジェクトに対して、社内の反発や障害が発生するのは、どういう背景や理由によるのでしょうか。

『コスト削減の最強戦略』の執筆にあたり、約2,000社を超えるクライアント企業の過去のプロジェクトを振り返り、『コスト改善余地があるにもかかわらず、多くの企業で見直しを実現できていない理由とは何か?』について調査しました。案件に関わったコンサルタント及び営業担当への詳細な聞き取りも合わせて検証してみると意外な結果が見えてきました。

【コスト見直しを実現できていない理由】
1位:現場担当者の動機付け不足
2位:見直し困難な”聖域”あり
3位:専門性の不足
4位:専任担当やミッションの欠如
5位:”見える化”されていない
6位:一元管理できていない
7位:見直しアプローチが間違っている
8位:経営陣のコミットメント不足

調査の結果、社内のコスト適正化に対して障害となっているのは、コスト削減のための直接的に必要な専門的な知見やノウハウの不足ではなく、
「1位:現場担当者の動機付け不足」や「2位:見直し困難な“聖域”あり」といった人事や組織制度、及び企業カルチャーに関わる課題でした。

コスト最適化は他業界の新陳代謝も促す

「コスト削減」活動自体にポジティブなイメージを持つ方は少なく、一般的には“人員削減”などの後ろ向きの施策を連想する方が多いでしょう。一方で企業が利益を創出するためには、「売上を上げる」か「コストを下げる」の2つの選択肢しかない中で、“売上”側は外部環境やユーザーの影響を大きく受けるため、なかなか自社の思いどおりにマネジメントできません。一方で“コスト”に関しては、検討から決断までは自社内で完結できるため、利益創出には欠かせないマネジメント要素となります。

コストを最適化することは、単に取引企業に対して値下げ要請することではありません。ゼロベースで必要な仕様や取引条件を見直し、新しい候補先企業を含めて徹底的に検討することは、サービスレベルが高くコスト競争力のある企業の発見や新しい取引開始の機会を生みます。自社のコストを徹底的に見直すことが、結果的には取引先の業界内の優秀な企業にとって新たな事業拡大/成長の機会を提供することにもつながるため、中長期的には他業界の新陳代謝も促します。

遠藤 昌矢 プロレド・パートナーズ 執行役員

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えんどう まさや / Masaya Endo

外資系コンサルティング会社Booz & Company(現在はPwCのStrategy&)にて9年間のコンサルティング経験、その後ITモバイルサービス大手のDeNAで4年間勤務した後に、株式会社プロレド・パートナーズへ参画。コンサルティングは、コスト削減領域のほか、製造、IT、流通、小売等を中心に、中期経営戦略の立案、アジア市場への参入戦略、新規事業立ち上げ、M&A支援、R&Dテーマ選定など幅広い経験を有する。京都大学理学部卒業、同大学大学院修了(細胞免疫学専攻)。

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