日本人は「スーパーヨット」誘致の効果を知らない 大型クルーズ船の寄港で観光地が儲からない現実
スーパーヨット・メガヨットは2019年、日本に19隻が寄港した。2018年の統計では、全世界に9395隻あるとされ、10年あまりで約2倍に拡大。それまでは年間300隻ほどのペースで増えてきたが、コロナ禍による渡航制限が続いたことで、プライベート空間が保たれる海のレジャー需要が高まり、現在は年間1000隻を超えるペースで新たなスーパーヨットが建造されているという。
市場規模も2016年の約2000億円から、2021年はコロナ禍にもかかわらず3000億円に拡大している。
スーパーヨット誘致を「超富裕層」の余暇のための施策だと思うなかれ。コロナ禍で落ち込んだ観光需要を補う新たな産業創出の可能性として、世界各地で誘致合戦が活発化する大きなうねりの中にある。直接的な恩恵は、町の小規模な事業者に及ぶ。
外貨を稼ぐためのインフラ開発、まちづくりは、荒廃しがちな地方経済、沈みゆく日本経済にとって、決して軽視できない波及効果を秘めている。
特別な対応に、特別の対価支払う客層
一般的な観光市場との違いは、寄港地における直接的な消費額の大きさにある。
日本に寄港する平均的な50メートルのヨットの場合、乗船者はクルーを含め30人程度にすぎない。だが、地元の特産品の購入や食料品の調達から、給油や船用品の修理・メンテナンス、歴史や文化を探訪する観光需要まで、地元の幅広い産業に経済効果が波及する。
「日本を2~3カ月かけて周遊したヨット1隻当たりの消費額は1カ月当たり1500万~2500万円に上る」(稲葉氏)
稲葉氏が、世界のヨット産業の現状をリポートする際、常に事例に挙げるのが、カリブ海や地中海にある小さな国々の経済成長の実績だ。
「カリブ海にある人口10万人の国グレナダは淡路島ほどの大きさ。元々は最貧国でしたが、ヨット産業に力を入れ、その経済効果は2013年のデータで4800万ドル(65億円:1ドル136円換算)。これはクルーズ船分野を上回る規模で、GDP全体の6%に相当します」
「東京などの大都市では大した金額ではないかもしれませんが、例えば石垣島や宮古島に落ちる金額と考えると、かなりのインパクトがある。
しかも、グレナダのシーズンは冬から春の半期。それだけでGDPの6%を稼いでいる。片や日本はゼロですから、もし今から1~2%でも上がっていけば、大きなドライバーとなって、日本全体の経済成長に寄与できると思います」
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