日本人は「スーパーヨット」誘致の効果を知らない 大型クルーズ船の寄港で観光地が儲からない現実
政府が感染症対策など水際対策のガイドラインを定めたことを受け、寄港地となる自治体は早ければ来春にも、国際クルーズ船の受け入れを再開させる。各地の観光地では消費の面でコロナ前の勢いを取り戻すことへの期待が高い。
だが、3年間のリセット期間を経て、2019年に寄港回数全国1位だった沖縄県や宮古島など一部地域では、一度に数千人に上る大型の国際クルーズ船受け入れをめぐり、人手不足やオーバーツーリズムへの懸念が広がっている。
そんななか、「量から質へ」の転換をかなえる方策として有望視されているのが、スーパーヨットやメガヨット、フライ&クルーズなど高付加価値型の海路市場の開拓だ。
スーパーヨット・メガヨットは全長24メートルを超えるラグジュアリーなモーターヨット。多くは、ビリオネラー(保有資産10億ドル以上)といわれる世界の「超富裕層」が個人所有している。税関や入管の面でハードルが高いとされてきたスーパーヨットの誘致だが、昨年、規制の一部緩和が実現し、重い扉がようやく開きつつある。最前線を追った。
コロナ前を超えて過去最高を記録
コロナ禍で一時、「世界最大の感染地」にまでなった宮古島はすでに、コロナ前を上回る勢いで観光需要を取り戻しつつある。観光トップシーズンの今年7~8月には、空路による入域観光客数が7万7000人超、10月には8万3000人を超え、2019年の前年同月の実績を超えて、それぞれ過去最高を記録した。
停滞していた経済の始動は地元にとって、ほっと胸を撫で下ろす状況のように思えるが、現実は決して手放しで喜べるものではない。資源、物資、人材ともに限られた島の中で、大勢の来訪者を受け入れるには、物理的なリミットがすでに見えているからだ。
観光復活への期待とは裏腹に、島の限界値が内外にさらされるトリガーとして今、行政や地元観光事業者が最も恐れているのが、国際クルーズ船の寄港再開だという。
「クルーズ船寄港は宮古にとって本当に必要なのか」
昨年6月、宮古島の地元紙にこんな見出しの寄稿文が掲載された。
執筆者は、以前のリポート(『宮古島の「雪塩」、訪日客戻らない前提の生き方』)でも紹介した、宮古島で「雪塩」を製造販売するパラダイスプランの西里長治社長。宮古島観光協会理事を務め、クルーズ客の受け入れにも当然、協力してきた立場だ。
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