日本人は「スーパーヨット」誘致の効果を知らない 大型クルーズ船の寄港で観光地が儲からない現実
そこで、クルーズ観光の課題を乗り越えるための有効策の1つとして注目されているのが、外国人富裕層が個人保有するスーパーヨットなどプレジャーボートの誘致だ。
「今、ちょうど1隻、香港から来たスーパーヨットがこちら(横浜)に来ていますよ。2カ月くらい前に横浜に入って、大阪、神戸、瀬戸内海を周遊した後に、これから石垣に向けて出航するところ。天候次第では宮古島に行き先を変更するかもしれません」
世界のスーパーヨット産業の現状を尋ねようと、船舶代理店のSYLジャパン(本社・横浜市西区)代表である稲葉健太氏に取材を申し込んだ11月下旬、水際対策の入国制限緩和後第1号となる外国船籍のヨットが、日本を訪れていた。
コロナ禍の間に進んだ規制緩和
SYLジャパンは、スーパーヨットの出入国手続きや観光支援、メンテナンスの手配などをワンストップで請け負う、国内では唯一の船舶代理店だ。2015年に、政府の国家戦略特区に沖縄を拠点とした「スーパーヨット特区」を提案したことをきっかけに、政府や自治体などに世界の動向をリポートし、入国などにかかる規制緩和を働きかけてきた。
これまでは、海外のヨットは事前に、入国から出国までの寄港ルートを国に提出し、寄港地ごとに税関のチェックを受ける必要があった。
政府は2021年12月、外国籍のスーパーヨットやプレジャーボートなどを対象に、こうした規制の一部を緩和。寄港地ごとの税関審査を省略し、代理店による管理を条件に出国まで自由な航行ができるようになった。さらに、外国人乗組員にマルチビザを発行し、航行のための長期滞在も可能になった。
「コロナ禍の間に、スーパーヨットの経済効果が理解され、かつてないほど誘致の機運が高まってきた」と稲葉氏。各寄港地からの期待に押されるように、国が重い腰を上げ、ようやく実現に動いた「貴重な一歩」だ。
次に控えるハードルは、ヨットが停泊できる係留スペースや、岸壁の改修、給水電設備などを各地で整備していくこと。今年4月に新たにビジターバースを開業した横浜市を皮切りに、沖縄県や岡山県などでも、ヨットの誘致に向けた港湾開発・改修計画の動きが出始めている。
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