「しゃべるアプリ」に見る次世代のドライブ体験 自動運転を見据えたアイシンの情報コンテンツ

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そこで、運転手も含めた車内の人がどのように移動時間を過ごすかは、自動車メーカーにとっても、カーナビやさまざまなアプリを提供するコンテンツ事業者にとっても、今もっとも知恵を絞るべき分野の1つだと思われる。

ビジネスチャンスという意味では、車内あるいは移動中だからこそ効果のある広告もあるだろう。車内、特に移動中という非日常の時間・空間だからこそできる過ごし方が、移動の道中と連動していれば、旅やドライブの楽しみを広げることもできるはずだ。

自動運転と組み合わせたサービスへ

体験会で配布されたRhythmの資料には、「Rhythmは移動にかかわる時間を『コスト(負担)』を『価値』へと転換」すると書かれている。もちろん、今でも車や電車での移動自体を苦痛だと感じる人もいれば、「ドライブすること自体が楽しい」とか「鉄道の旅で車窓を見ているだけで幸せ」という人もいる。

しかし、単調になりがちな高速道路の旅に付加価値をつけていく発想は、自動運転が高速道路から始まるであろうことを考慮に入れると、戦略としては王道だと言えるだろう。

新東名下り新富士IC付近 このあたりでも多彩な音声案内が流れた(筆者撮影)

アイシンは、これまでもカーナビメーカーの1つとして車への情報提供にかかわる事業に力を注いできたが、自動運転化によって走行中でも動画の視聴が可能になれば、カーナビ・スマホと組み合わせた情報サービスやインタラクティブサービスが、当たり前となる時代が来そうである。

なお、アイシンでは、「Rhythm高速道路モデル」について今後ブラッシュアップしていき、2023年度中にはアプリなどに実装できないかを検討しているとのことであった。

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体験会を終えて清水PAを覗くと、2018年に開店した「ミチドンキ」のにぎやかな店頭が目に入ってきた。当初は期間限定の出店とも言われていたが、すでに5年目に入った。一方、ミチドンキは他のSA・PAには展開が広がっておらず、日本で唯一のミチドンキのままである。

ここでも人気商品は街角のドン・キホーテと同様、焼き芋だと聞いて、未来のデジタル技術の行く末にいっぱいだった自身の脳が、すっかりほぐれたことに気づいた。焼き芋だけでなく、ドンキでしか手に入りにくいスナックなども思わず購入し、お土産として帰途についた。

佐滝 剛弘 城西国際大学教授

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さたき よしひろ / Yoshihiro Sataki

1960年愛知県生まれ。東京大学教養学部教養学科(人文地理)卒業。NHK勤務を経て、NPO産業観光学習館専務理事、京都光華女子大学キャリア形成学部教授、リベラルアーツ・ジャーナリスト。『旅する前の「世界遺産」』(文春新書)、『郵便局を訪ねて1万局』(光文社新書)、『日本のシルクロード――富岡製糸場と絹産業遺産群』(中公新書ラクレ)など。2019年7月に『観光公害』(祥伝社新書)を上梓。

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