崩壊の道を静かに進む「水道」老朽化の悲惨な未来 「蛇口をひねっても出ない」そんなことが現実に

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収入減は、とくに小規模な水道事業者を直撃する。厚生労働省によると、2021年時点で、日本には一般の需要に応じ水道によって水を供給する水道事業者は3819あり、うち1312が給水人口5000人を超える、上水道事業と呼ばれる事業者で、残り2507が、給水人口が5000人以下の簡易水道事業と呼ばれる小規模な事業者だ。2507の簡易水道事業者が対象としている給水人口は約174万人。

どういうことかというと、水道事業者全体の数の3分の1しかない上水道事業者が日本の人口の約99%に水道事業を提供し、3分の2を占める簡易水道事業者が約1%に水道事業を提供しているのだ。

こうした小規模な事業者は地方に多く、そして、地方ほど人口は急速に減っている。だからといって、チェーン店が不採算店を閉めるようには撤退ができない。水道管は網の目のようにつながっているし、それになにより、水道は生活に欠かせないインフラだからだ。

たった1人でもそこに住み続ける人がいる限り、水は供給し続ける必要がある。だから、給水人口が少ない都市ほど料金収入の総額が少なく、赤字の組織も多い傾向にある。地方ほど、人口減の影響を強く受ける。この点は電力事業と異なる。

地球約17周分の水道管が日本の地中に埋まっている

いきなり話がわき道にそれるが、電力需要も水道事業と同じように人口減と節電によって減少すると思われる方もいるかもしれない。しかし、それはどうも違うようだ。確かに人口は減っているし節電家電が普及し節電意識も高まっている。

気候変動対策として排出する二酸化炭素の量を減らすため、これまでガソリンや灯油がカバーしてきた部分を電力で賄おうとする動きが急速に進んでいる。電気自動車しかり、キッチンの電化しかりだ。ゆえに、電力需要は水需要ほど落ち込まないどころか、増えていくという試算もある。従って、水道事業と電気事業は別に考えるべきだろう。

とにかく、水の需要は減っていき、水道事業者の収入は減っていく。収入が減れば十分な投資ができなくなる。何に対してかというと、すでに建設された水道インフラに対してである。

日本の水道普及率は98%を超えている。山がちな島国の津々浦々に、水道管網が張り巡らされているのだ。すでに触れたが、水道管路の延長は67万6500km、地球約17周分の水道管が日本の地中に埋まっていることになる。この充実したインフラが家庭や事業所への水の供給を支えている。

しかし、形あるものはいずれ壊れる。しかも、それぞれのペースでだ。いつか必ず交換しなくてはならなくなる。それがいつなのか。日本では法定耐用年数40年と決められている。

1918(大正7)年に初めて定められたこの耐用年数は、当初はその素材の物理的な耐用年数を根拠としていた。しかしその後、技術の進化が素材の寿命を延ばしたことで改定が進み、徐々に、資産としての経済的陳腐化も加味されるようになった。

ともあれ、2016年の時点で全体の14.8%が40年を超えて使われており、この数字は20年後、つまり2036年には23%に達するということだ。

おまけに、これまでに寿命を迎えた水道管はすべて更新されているのかというと、そうではない。新しくなっているのはほんの一部で、更新の遅れが漏水や破損事故につながっているとされている。

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