崩壊の道を静かに進む「水道」老朽化の悲惨な未来 「蛇口をひねっても出ない」そんなことが現実に

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「優等生だった」日本の水道インフラは今、崩壊への道を静かに進んでいる(写真:HEILAI Zhengnan/PIXTA)
日本の水道管は総延長にして地球17周分、うち4周分は法定耐用年数の40年を過ぎており、「水道インフラは今、崩壊への道を静かに進んでいる」と言うのは、加藤崇氏です。いったい日本の水道に今何が起きているのでしょうか。同氏の新著『水道を救え』を一部抜粋し再構成のうえ、お届けします。

「蛇口をひねっても水が出ない」そんなことが現実に!?

蛇口をひねっても水が出ない──。

こう聞くと、どこか遠い国のできごと、あるいは古い時代の物語のように感じられるかもしれない。しかし、これは日本の近未来だ。僕たちの生活を支えている水道インフラは今、崩壊への道を静かに進んでいる。残念ながら、これは事実だ。

このままでは、自宅の蛇口をひねっても水が出ず、その代わりに、街を歩けば道路のあちこちで、水道管の破損が原因の水漏れが起きている、そんな風景が冗談ではなくなるのだ。

「日本では水道水が飲める」

2021年に開催された東京五輪でも、海外から来日したメディアの中にはこの事実に目を見開く人もいた。

「たいていの国では水道水は飲めない」ことを、海外旅行をきっかけに知ったという人もいるだろう。ガイドブックには水道水を飲むなと書かれていたし、水はビンやペットボトルに入ったものを買い求めるのが常識とされていた。レストランでも、ワインやコーラと同じように水は有料だという常識に驚いた人もいるはずだ。

もちろん、海外には上下水道が布設されていない国もある。そうした諸外国と比べると、飲み水に簡単にアクセスできる日本の水道は優等生だった。

では「優等生だった」日本の水道が、なぜ、崩壊の危機にあるのか。理由はシンプルだ。もともと儲からなかった水道事業が、輪をかけて儲からなくなってきたことに尽きる。

なお、上下水道については「敷設」という表記のほうがなじみがあるかもしれないが、水道法では「布設」という言葉が使われているので、それに倣うことにする。

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