日本の防衛「中国の2つのジレンマ」に有効な戦略 戦略3文書改訂で「縦深拒否」を目指すべき理由

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2013年に策定された安保戦略も、安全保障戦略の方向性の大枠を示したものではあっても、防衛体制に関する記述を大綱と中期防に譲っており、防衛戦略を具体化したものではない。

中国にとっての2つのジレンマ

中国の軍事膨張と既存の国際秩序への挑戦はこの前提を変えた。アメリカの新たな国家安全保障戦略は、中国を「唯一の競争相手」と呼び、国家防衛戦略は、「最も包括的かつ深刻な課題」と呼んだ。どのような呼び方をするにせよ、アメリカのみならず日本にとっても中国が第一の軍事的挑戦であることに疑いはなく、その中国が台湾に対して激しい言説とともに軍事的圧力をかけることで、台湾有事の懸念を高めている。

中国が台湾の非平和的統一を試みる場合、認知戦による台湾民衆への働きかけから軍事侵攻に至るまで、軍事・非軍事手段を組み合わせて実行する可能性が指摘されており、必ずしも最初から本格侵攻が行われるとは限らない。他方、中国がどこかの段階で台湾侵攻を軍事的に着手し、成功させたいのであれば、本年8月の弾道ミサイル発射で示されたように、台湾海峡側からのみならず、台湾東岸の西太平洋を含め、四方の海空領域から試みるはずだ。

その場合、アメリカや日本の軍事的介入を招くと、台湾東側からの侵攻に当たって、中国はその後背地からの攻撃に脆弱になる。中国がこの脆弱性を回避するためには、日米を台湾から切り離すか、侵攻当初から日米も含めて西太平洋における局地戦を想定するかの選択を迫られることになる。

軍事的には日米を切り離し台湾のみに対処したほうが容易だが、日米の介入に備えないまま後背地から攻撃されることは、介入に備えて当初から日米を巻き込む場合より大きな軍事コストをもたらす。そのコストを避けるためには、先んじて日米に第一撃を仕掛けるオプションも想定しなければならない。

この中国にとっての「台湾侵攻における日米巻き込みのジレンマ」の存在は、逆に日本にとっても、南西諸島や尖閣を含む自らの領土を防衛するため、中国が最悪の選択をした場合に備えるべき必要性を示している。

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