大学で基礎研究を選ぶ研究者が大事にすべきもの 初期段階での財産権の過剰な保護が抱える問題

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だから、大学を選ぶか企業を選ぶかは、端的に言って自由を選ぶか報酬を選ぶか、ということになる。

基礎研究はなぜ大学で行われるのか

そもそも基礎研究と応用研究の両方が必要なのはなぜだろうか。

基礎研究が主に大学で行われ、応用研究と商業利用を目的とするイノベーションが主に企業で行われるのはどうしてだろう。

ここでは単純化のために、イノベーション・プロセスは基礎研究(ステージ0)と応用研究(ステージ1)の2つの段階だけで構成されると仮定しよう。

すべては基礎的な発見から始まる。新しい定理や法則、新種の分子、新種のバクテリアなどなど。

これがステージ0すなわち基礎研究の段階である。次に、この新しい定理なり発見なりに基づき、製品の商業化へとつながるような別の発見がある。

これがステージ1すなわち応用研究の段階である。

ここでイノベーション・プロセスは完了し、応用研究の成果がワクチンや医薬品といった形で市場に投入されることになる。

どちらのステージにも不確実な要素があり、失敗に終わる可能性は大いにある。とくにステージ0の基礎研究が失敗に終わると、ステージ1にはつながらない。

■なぜ基礎研究は大学で行われるのか

どちらのステージも大学でやっていいし企業でやってもいいはずだ。それなのになぜ、基礎研究は主に大学で行われるのだろうか。

筆者らの研究は、次のように説明している。基礎研究は応用研究よりも不確実性が高い。具体的な応用という新しい地平が開けるかどうかもわからないままに未開の土地を開拓するのだ。

ここで、基礎研究が大学で行われることには2つのアドバンテージがある。1つは情報面で、テーマを自ら選んだ研究者は、どんな戦略で臨むか、どの道を進みどの道を捨てるかを誰よりもよく知っている。

もう1つは財政面である。学問の自由と引き換えに、大学の研究者は企業より低い報酬を受け入れる。それにおそらく民間の資力では、商業化につながらない研究も含めて研究プロセスのすべての段階を自己資金でまかなうことはできまい。

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