ここで、ありとあらゆる基礎研究の進歩も新たな定理や法則も特許によって知的財産権が保護されている世界を想像してほしい。
知財保護とアンチコモンズの悲劇
その世界では、応用研究に取り組む側は必要な基礎研究すべての特許も使用料を払わなければならず、膨大な費用と手続きの負担を迫られることになる。そうなったら応用研究はまったく進まなくなるだろう。
たとえば、ある新薬を開発する道のりにいくつもの特許が立ちふさがるということになりかねない。これはまさに「アンチコモンズの悲劇」である。
アンチコモンズの悲劇とは、共有されるべき財産が細分化されて私有化され、社会にとって有用な活用が妨げられることを意味する。
知的財産権の保護は、商業化可能なイノベーションとそれを実現した応用研究を守るためには必要であるが、基礎研究の段階での過剰な保護は非生産的な結果を招くことになる。
より自由な制度の下でこそ、大胆なイノベーションにも実現のチャンスがある。
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フィリップ・アギヨン
コレージュ・ド・フランス教授
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Phillipe Aghion
コレージュ・ド・フランス、INSEAD(欧州経営大学院)、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)教授。ハーバード大学教授を経て現職。ピーター・ホウィット教授との共著にEndogenous Growth TheoryとThe Economics of Growthがある。
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Celine Antonin
OFCE(フランス経済研究所)エコノミスト、コレージュ・ド・フランス・イノベーションラボ リサーチ・アソシエイト
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Simon Bunnell
INSEE(フランス国立統計経済研究所)シニアエコノミスト、フランス銀行エコノミスト、コレージュ・ド・フランス・イノベーションラボ リサーチ・アソシエイト
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