経済成長の5つの謎
経済モデルの出来不出来は、何らかの現象をよりよく解明できるかどうかで判断される。シュンペーターの創造的破壊のパラダイムは、いくつかの成長の謎を解くカギを示してくれる。
謎はいくつもあるが、ここではそのうち次の5つを取り上げたい。
経済成長はじつは最近の現象である。アンガス・マディソンの推定によると、世界の1人当たりGDPはキリスト生誕の1年後も1000年後も同じだという。
そして1820年になっても、1000年と比べて53%増えただけだった。年率に換算すれば1/19%(約0.0526%)にすぎない。
1820年が過ぎてから、まずイギリスで、続いてフランスでテイクオフが起きる。
この2カ国の成長ぶりたるや、世界全体の1人当たりGDP成長率を、それまでの0.05%から1820〜1870年には10倍の0.5%に押し上げたほどである。
1950〜1973年には成長ペースに一段と拍車がかかり、年平均3%ほどに達した。
人類の歴史からすればごく最近になってからのこの突然の飛躍的な成長の加速は、どう説明したらよいのか。それに、中世以降重要な発見の多くは中国で行われたというのに、なぜテイクオフは中国ではなくヨーロッパで起きたのか。