無糖なのに甘い「かごしま知覧紅茶」ヒットの要因 全国的には馴染みのない産地をフォーカスした

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「そういった中で、国産、さらには知覧紅茶の特徴や価値をお伝えすることに苦労しました。産地の「知覧」の地名に馴染みがない方が多くて発売以来『どこなの?』といったお声がたくさんありました」

 知覧のある南九州市は、市町村単位でみれば荒茶生産量が日本一位。随一の茶どころである。しかし、知覧茶のブランド名は鹿児島ではよく知られているが、関東や関東以北まで行くとさほど知られているわけではない。

「知覧ブランドが知られていないことに、悩みというか、もっと知ってほしい思いがありました。静岡産の煎茶のブレンドにも知覧産茶葉は使われてきた時代背景があります。けれど、知覧の生産者さんたちはしっかり味作りに取り組んで美味しい茶葉を作ってきているので、そこをしっかり出したいっていうふうな思いがあることに、産地を訪問してより気づきました」

リニューアルで視覚的に訴求

そこで、2020年に大幅なリニューアルを行い、商品名を「知覧にっぽん紅茶」から「かごしま知覧紅茶」へと変更。パッケージにも地図を入れて、鹿児島にある知覧という土地のことを視覚的にもわかりやすく示した。

なじみのない「産地」をあえてフォーカスしていった(提供:ポッカサッポロフード&ビバレッジ)

 このリニューアルでは、味の見直しも行った。支持されている「すっきりとしていて甘い余韻がある」商品の魅力をより明確に打ち出せるように製造工程を見直し。それにより、より苦み渋みを抑え、すっきり感を出し、かつ甘味がより感じやすい味覚に仕上がった。

味・香りの特徴を視覚的にもわかりやすく伝えるためにパッケージも大幅にリニューアルしている。金や黒を使用したデザインから、ティファニーブルーを使い、爽やかで華やかな香りの印象をわかりやすく訴えつつ、「すっきりと香る甘い余韻」と味覚的な特徴を明記。

鹿児島県内では圧倒的な知名度を誇る、知覧の茶畑(著者撮影)

「こだわり」のある実店舗と通販での売れ行きが好調

こうした試行錯誤を経て、毎年着実に売り上げを伸ばしている。背景や素材を重視した商品だからこそ、売れ方にも特徴があるそうだ。

「これは『かごしま知覧紅茶』だけでなく、TochiとCraftシリーズ全体に言えることですが、通販での売れ行きがいいですね。サイト上だとしっかりと商品の背景やこだわり、産地の説明ができるので、ストーリーが伝わりやすく、売れ行きが好調です。とくに、Amazonのようなサイトでは市場のシェアとはまったく違うような、トップメーカーの商品と近いような売れ方をしています」

一方で、実店舗への卸先は、希少な物や素材にこだわっているスーパーや、高級スーパーでの取り扱いが多い。

「われわれの飲料業界の反省点なのかもしれないですけど、ペットボトル飲料がどうやって作られているのかの背景の部分をあまり説明してきませんでした。一般ユーザーが買ったペットボトルの茶葉について、人が茶葉を育てて、それを工場でちゃんと抽出して、人の手を介して、思いを介して作られているということをしっかり伝えていくことが、この商品の価値なのかなと考えています」

次ページ飲料業界の反省点と、お茶の市場規模の拡大
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