無糖なのに甘い「かごしま知覧紅茶」ヒットの要因 全国的には馴染みのない産地をフォーカスした

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そしてもう1つは、消費者の健康志向の高まりだ。糖質制限を意識する人も多く、「甘さ離れ」の傾向にあり、砂糖を入れない飲料が大幅に増えている。紅茶、コーヒーも砂糖を入れないタイプを求められるようになっており、特に、前出の「午後の紅茶おいしい無糖」の発売で、今まで不活性だった無糖紅茶ペットボトルが急拡大していたことはエポックメイキングな出来事だった。さらに、従来は甘い物がほとんどを占めていた炭酸飲料のペットボトルにも無糖の炭酸水という選択肢が出てきた。

ペットボトル飲料マーケット全体で、すっきりした味わいや無糖飲料が浸透していたのだ。

そうしたトレンドに乗って、「かごしま知覧紅茶」はじわじわと売上を伸ばしていった。肥後氏によると商品開発は元々魅力ある産地の味ありきで行っており、必ずしもヒットの要因を分析して作られたわけではなかったが、今の消費者の嗜好に合い売上を伸ばした結果となった。

「その土地ならでは」の個性を付加価値にした

「かごしま知覧紅茶」はポッカサッポロフード&ビバレッジのTochiとCraftシリーズの1つだ。TochiとCraftシリーズは、メーカーだけでなく、その土地の人と一緒に味づくりをするのがコンセプトのペットボトル飲料シリーズ。無糖茶なら、「加賀棒ほうじ茶」「伊達麦茶」「北海道コーン茶」など、土地の名前が商品名をラインナップしている。

茶畑
外国産紅茶とは違った味わいを生み出す、知覧の茶畑(筆者撮影)

「かごしま知覧紅茶」は鹿児島県南九州市知覧産の茶葉を100%使用して作られている。無糖なのに甘さを感じる味わいは、この素材に大きな理由がある。

前提として、緑茶も紅茶も原料となる茶葉はお茶の木から採れる。お茶の木には大きく分けて紅茶品種と緑茶品種があり、緑茶品種で作られた紅茶はまろやかで優しい味わいが感じられる傾向にある一方で、紅茶品種は、タンニン含有量が多くしっかりしたボディ感や紅茶らしい苦み、渋みが感じられる味わいで砂糖入りのペットボトル紅茶にもよく使われてきた。

緑茶品種、紅茶品種どちらにも持ち味と良さがあるが、「かごしま知覧紅茶」は緑茶品種の国産ならではのまろやかで優しい味わいを生かしており、苦みや渋みが強くなくすっきりした味に仕上げている。そして、無糖なのに甘い余韻のある味わいは、ゆたかみどりという緑茶品種をメインにブレンドしていることが大きい。

「全国的にお茶の品種はやぶきたが8割くらいですが、鹿児島産はやぶきた品種だけでなく、ゆたかみどりを中心にさえみどり、あさつゆなど他の品種も結構多く植えられているのが特性でした。そこで『かごしま知覧紅茶』は甘い香りが特徴的なゆたかみどりを中心にブレンドして香りをしっかり出せるようにしました」

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