W杯4大会出場「長友佑都」を支えたメンタル術 体格に恵まれていない36歳がなぜ活躍できるか
このままでいいパフォーマンスができるわけがない。冷静に考えようと努めた。そこで、ふとした瞬間に気づいた。
「弱い自分でもいいじゃないか。というより、自分は弱いんだから、そんな弱い自分と戦ってどうするんだ?」
「サッカー選手・長友佑都というあるべき自分を作りすぎていないか? もっと人間としての、生身の自分と向き合おう」
「生身の自分は決して強くない。じゃあ、サッカーは? サッカーは楽しいものだ。今みたいに面白くないのは、人間・長友佑都の感想か? それともサッカー選手・長友佑都か?」
自問自答した。
自分と戦う必要はない
その答えは、僕自身はサッカーが好きで、もっと楽しめるはずなのに「サッカー選手・長友佑都」として自分を捉えすぎているということだった。
自分と戦う必要はない、もっとサッカーを楽しめばいい。
何かが吹っ切れたようだった。
2014年11月9日のヴェローナ戦。びっくりしたのは、体がものすごく動いたことだった。
出場停止、ケガ、インフルエンザ。5試合、ほぼ1カ月半試合に出られていなかったのに、僕の体はキレにキレていた。
試合は2対2で引き分けたけど、僕は90分間走り、戦い続けることができた。
体のコンディションは最悪だったけれど、向き合い続けた自分自身の失意への光が見えたことで、メンタル的に吹っ切れていた。
そのメンタルが、僕自身を躍動させてくれたのだと思う。
メンタルは肉体を支配している――。
肉体だけではない、技術も含めてまずメンタルさえ安定していれば、いいパフォーマンスができる。それに気づかされた。
「強くあれ、自分に負けるな」
大事な問いかけだけど、あまりにそれを思い続けると心が固まってしまう。固くなったものは、強い衝撃ですぐに割れてしまう。
理想はしなやかで柔らかいメンタル。
それを手に入れなければいけない――。
ヴェローナ戦はインテル時代の僕にとって忘れることのできない、貴重な示唆を与えてくれる一試合だった。
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