自動運転レベル4解禁、巡回バス実証実験の現状 道交法改正で公道でも自動運転が可能になった

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ただし、現在、ZEN driveが運行しているのは、「永平寺参ろーど」と名付けられた自転車歩行者専用道。公道ではない。全長6kmのうちの‪2km区間‬を、住民の移動手段として有料運行している(大人100円/1回、子ども50円/1回)。マクニカの担当者は、「まずは、公道ではなく、こうした閉鎖区域で、(永平寺町のように)実際に実証実験やサービス運用の実績があるところが、モデルケースとして認可されるのではないか」と予想する。公道での運用が始まるのは、まだまだ先になるだろうというのだ。

確かに、限定地域とはいえ、いきなり公道でレベル4の自動運転車が走るのは、リスクも大きいだろう。実用化の検証にも時間がかかりそうだ。ちなみに政府が目標とするロードマップでは、‪2025年を目途に、「限定地域での無人自動運転移動サービスの全国普及‬」を目指すという。そう考えると、レベル4の自動運転に対応するエヴォが実際に公道で活躍する姿を見られる日は、2023年早々ではないにしろ、そう遠くはないのかもしれない。

課題も多いが今後の展開に注目

走行シーン
実証実験での走行シーン(筆者撮影)

今回、実証実験が行われた湘南アイパーク周辺の公道で、実際にエヴォなどのレベル4の自動運転バスが、患者の病院への移送などに使われる時期などは未定だ。とくに湘南アイパークがある藤沢市や近隣の鎌倉市は、江ノ島や鎌倉などの観光地が多いこともあり、交通混雑が地域課題となっている。渋滞により、通院するための移動時間が読めず、最悪は診療時間に間に合わないなどのケースが出てくることも考えられるのだ。ITC化や自動運転車の活用に加え、当エリアでは、そうした課題の解決も重要だといえる。

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そのためもあるのだろう、今回の「ヘルスケアMaaSが拓く地域コミュニティの未来2022」では、周辺の村岡・深沢地区の交通状況を分析し、それをもとに住民と主催者による、より良い交通環境を作るための意見交換なども行われた。実際に実用化を進めるうえでは、住民の実状や意向も把握し、効率的なだけでなく、いかに実状にあった方策を取るかが重要なだけに、今後の展開が注目される。

村岡・深沢地区は、湘南アイパーク近隣にJR東海道線の新駅「村岡新駅(仮称)」が2032年頃の開業を予定されていることもあり、今、新しいまちづくりがはじまっている最中だ。自動運転車を含めたヘルスケアMaaSの活用なども、そうした取り組みの一環だといえる。いずれにしろ、同エリアがいかに先進技術を活用し、住民の利便性などを向上できるのかは、非常に気になるところだ。高齢者の移動手段や健康維持などに関し、同様の課題を持つ他地域の参考にもなる、モデルケースを上手く構築することに期待したい。

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平塚 直樹 ライター&エディター

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ひらつか なおき / Naoki Hiratsuka

1965年、福岡県生まれ。福岡大学法学部卒業。自動車系出版社3社を渡り歩き、バイク、自動車、バス釣りなどの専門雑誌やウェブメディアの編集者を経てフリーランスに。生粋の文系ながら、近年は自動運転や自動車部品、ITなど、テクノロジー分野の取材・執筆にも挑戦。ほかにも、キャンピングカーや福祉車両など、4輪・2輪の幅広い分野の記事を手掛ける。知らない事も「聞けば分かる」の精神で、一般人目線の「分かりやすい文章」を信条に日々奮闘中。バイクと猫好き。

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