「アメリカの原発は2030年には減少する」 リチャード・レスターMIT教授に聞く

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――原発の安全性という点では、日本では米国とは異なり、周辺自治体が策定する住民の防災避難計画が規制委員会による審査の対象になっていないことが問題視されている。

日本において規制委員会が避難計画を審査対象としていないことは知らなかった。避難計画というのは極めて重要なものであり、十分な判断能力を持った組織がその有効性を判断すべきだ。と同時に、透明性を確保したうえで計画の有効性を説明する責任がある。現状の組織にそうした能力や透明性があれば問題はないかもしれないが、もしそれらが欠けているとすれば、規制委員会がそうした判断を行うべきだ。

中国や新興国の原発の安全性が課題に

――世界的にテロの脅威が高まるなか、米国では原子力施設に対するテロへどう対処していますか。

まず最近注目されているのは、サイバーセキュリティへの対応だ。米国では経年化した原子炉が多いこともあって、相対的にネットワーク化されておらず、それがサイバーテロに対する免疫を生んでいる。

もちろん、物理的な防護も重要な課題だが、米国では9.11(同時多発テロ)以降、そのための対策見直しが行われてきた。全容は公表されていないが、すでに対応はなされている。航空機衝突からの防護も広範に研究されており、米国内のほとんどの原子炉は格納容器で対航空機の衝撃に耐えられる基準に合致している。とはいえ、当然ながらまだ例外もあるので、日本も福島の教訓を生かしながら、そうした基準について十分な対応をとるべきだろう。

――中国が推し進める多数の原発建設計画の影響も注目されている。

非常に重要な問題だ。中国は大量のCO2排出国であり、早急に原発を増設する必要性が高まっており、その一方で原発の安全性を確保する必要がある。中国に限らず、サウジアラビアやナイジェリア、ベトナムなど多くの新興国が原子力を拡大しようとしている。そのため、原子力の安全性に対する国際的な取り組みが求められており、私は日本の重要な役割に期待している。

原子力の安全基準や組織面での安全性の担保などに関し、福島の事故の経験をポジティブに転換することができる。米国でもスリーマイル島の事故が原発の安全性を高める契機となった。そのためにも、日本には今後も原子力に携わってほしいと考えている。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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