「アメリカの原発は2030年には減少する」

リチャード・レスターMIT教授に聞く

――日本では2030年におけるエネルギーミックス(電源構成)について新たな議論が始まったが、米国でのエネルギーミックスについてはどう考えているか。

2030年の時点では、原子力の比率は上昇するというより、むしろ低下するだろう。再エネの比率は高まっていると見られ、天然ガスも増え、石炭が減るだろう。低炭素ベースの燃料へのシフトが起こるだろうが、それほど急激ではないだろう。

本当の課題は、2050年までにCO2削減目標をどうやって達成するか。そのためには太陽光と風力を増やすこと、エネルギー効率を高めること、原子力の比率を増やすことが必要だ。これらがすべてそろえば80%削減目標は幾分なりとも達成のチャンスはあるだろう。逆にこれらの一つでも欠ければ、達成の可能性は非常に小さくなる。

日本の電力業界と規制委には改革が必要だ

――一方、日本の原子力政策は福島第1原発事故の後、迷走状態にあるが、その問題点や課題をどのように見ているか。

大きく三つの課題があると考えている。第1に、福島第1原発の除染、廃炉作業を効果的に進めること。第2に、かなりの数の原子炉を再稼働させること。第3に、長期的に原子力を技術的に競争力のあるものにすることだ。

――原発の再稼働については、原子力規制委員会が新設され、「世界最高レベル」と称する新規制基準に従って原発の安全性審査が行われているが、国民の間ではなお安全性などに対する疑念があり、再稼働反対論が根強い。

まず、政府が原子力の必要性をしっかりと説明することだ。具体的には、原発が停止して電力コストが上昇したこと。それによる産業競争力への影響。化石燃料に依存することで貿易収支の赤字にもつながっており、エネルギーセキュリティ(安定供給)の助けにもならない。CO2排出が増えて環境へのマイナスの影響も大きい。安倍政権は今後もこれらの論点に立脚した戦略的な情報発信を続けることが必要だ。

電力事業者も、既存の原子炉の安全性を継続して高めていく努力が求められる。電力業界、各事業者が組織の改革を行い、規制委員会も引き続き能力の強化に努めるべきだ。規制委は独立性の確保、異論に対してオープンであること、透明性の確保、人材の育成によって、国民の信頼を取り戻すことが重要だ。

福島原発事故を考えれば、確かに再稼働への課題は理解できる。ただ、原発全基停止という現状を変えない限り、日本そして世界にとっても重要な転換点を迎えることはできないだろう。

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