VAIOスマホは、本当に"ガッカリ端末"なのか 日本通信とVAIOの目指す事業モデルとは?
VAIO Phoneのコンセプトについて、花里氏はビジネスをはじめとする様々なシーンで、誰もが感じる使い心地の良さを挙げた上で、多機能よりも本質、ハードウェア単体よりもサービスとのトータルパッケージを掲げている。ここでいう、サービスとのトータルパッケージとはどういう意味だろうか。
「日本通信はコンシューマ向けのb-mobileブランドも立ち上げているが、基本的には企業向けにモバイル通信ソリューションを提供している企業だ。企業向けにはこれまでにも、Android端末を用いたアプリケーション管理(アプリのインストールや削除、バージョン管理など)を一括でリモート実行できるなどのソリューションを提供してきた。しかし、そうした高付加価値サービスを提供するには、自社で端末を持たねばならない。自社でスマートフォンの開発・販売を行うのは、さまざまな付加価値を加えるためだ」(福田氏)
福田氏によると、VAIO Phoneに組み込まれているAndroid 5.0には、上記のようなアプリ管理を行う機能や、コンシューマ向けの「03スマホ」のようなIPベースの付加価値通話サービスなど、日本通信がこれまでにコンシューマ向け、企業向けに提供してきたサービスに接続する機能が提供されているという。企業ユーザーならば、それら独自機能を管理者が一括管理することも可能で、メールやカレンダーなどの設定も管理者側がコントロールできるという。03スマホも、契約を済ませれば自分の端末に対して更新がかかり、即座にサービスが利用開始になるそうだ。
「端末+サービスのパッケージを評価して欲しい」
多くは日本通信の出自(企業向けモバイルソリューション企業)ということもあってB2B機能が多いが、VAIO Phoneは端末というハードウェア単体で訴求する製品ではなく、自社製端末でなければサポートできない機能、サービスを組み合わせたパッケージ製品として企画されているという。
しかし、それならば何も「VAIO Phone」でもなく、これまで端末を調達してきたファーウェイやZTEなどにハードウェアの生産を委託し、日本通信がAndroidのカスタマイズを行うという方法でも実現できただろう。
「実際にはかなりハードルが高い。Googleに対してAndroid端末の認証を得る前の段階から手を入れなければ実現できない機能も少なくない。VAIOとでなければ実現できなかった」と福田氏は両社の協業が不可欠だったことを強調した。
一方、前記のような端末のリモート管理が差異化要因とするならば、当初より管理機能が組み込まれている上、企業システムとの親和性が高いWindows Phoneを使うという手もあるだろう。かつてVAIOがソニーに属していた頃、Windows Phoneに興味を示していたことがあった。
「純粋にタイミングの問題。日本通信と話を始めてから、端末を提供できるようになるまでの最短距離を目指した。Windows Phoneに興味があり、実際にVAIO Phoneとして作ることを検討はしている。今後、適切なタイミングで取り組む可能性はある。ソリューション、サービスに関しても順次、アイディア次第で取り込んで行く予定だ。たとえばVAIO Zは国内向けにしか販売していないのに、なぜLTE通信機能を内蔵していないんだといった質問も受ける。VAIOの製品に、日本通信のサービスを組み込んで提供することもあるだろう」(花里氏)。
「我々が提供するサービスや機能を使えば、必要なアプリをリモートで提供し、それぞれのアプリ設定も一括で行える。そういったことができるよう、あらかじめAndroidを作り込んでいるからだ。我々のサービスは主にB2C向けだが、B3Cもコミュニケーション手段であることには変わらない。そのひとつがIP電話サービスで、03スマホもそこから生まれた。企業向けには他にも多くの機能を提供している。それらをコンシューマ価値に転換するよう開発と準備をしているので、ぜひ期待して欲しい」(福田氏)。
日本通信はコンシューマ向けにプリペイドのMVNOサービスを展開して、一般への知名度を高めてきた経緯があるが、実際には企業向けソリューションが主業務だ。一方のVAIOは個人向けパソコンの代表格として、かつては海外でも浸透していたブランドである。しかし、パソコンの世界ではどんな製品も企業システムと接続して使われる可能性があり、ネットワークを通じたリモート管理や、サービスやペリフェラルと組み合わせて価値提案をするといった考えは一般的だ。
この両社がコンシューマブランドの”VAIO”を使って、新しい時代のスマートフォンを発売する。そう言ってしまえば、もっと直接的にエンドユーザーに訴えかけるハードウェアが登場することを想像するものだ。一般の消費者の目からは見えにくい部分に差異化要因が盛り込まれているという主張は、一般の消費者にどのように評価されるだろうか。
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