話を聞いてもらいたい人は帰り道をうまく使おう うまく話せなくても聞いてもらえる4つの技術

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3 一緒に帰ろう

さて、さらに段階をあげていきましょう。

一緒に帰ろう。

学校でも職場でも、あるいは講演会を聞きに行ったあとでもなんでもいいのですが、駅まで一緒に帰るわけです。

僕はこれが本当に苦手なんですよ。

この前もある対談が終わったあとに、外に出てから、その対談相手と微妙な雰囲気になったんです。このあとどうしようか的な。

で、結局2秒でそれに耐えかねて、「ちょっとタバコ吸ってから帰ります」と逃げてしまいました。その後3日くらいは、一緒に帰ればよかったと深く悔いましたね。本当はもうちょっと話がしたかったんで。

よく考えるとね、微妙な雰囲気になるということは、向こうも迷ってるんですよ。

打ち上げに行ってもいいし行かなくてもいい、もし誘われたら行こうかな、みたいに。

「聞いてもらう技術」的には、食事に誘ったりできるとベストなんでしょうが、それはちょっとハードルが高すぎるというときには、とりあえず様子を見るべきです。

「どの駅から帰ります?」と聞けばよかった。

帰り道ってね、気が抜けてるんで、普段はできない話ができるものなんですよね。

旅行の帰り道に普段はできない話が始まるかも

これの極限が旅行の帰り道です。

いっぱい遊んで、体はくたくた。だけど、高速道路は渋滞していて、まだまだ時間はかかりそう。

そんなとき、助手席に座っていたなら、絶対に寝ないほうがいいです。運転している人に悪いという理由ではなく、普段はできない話が始まるかもしれないからです。

疲れていて、手持無沙汰の時間にこそ、戸惑う心は姿を現すものです。

4 ZOOMで最後まで残ろう

これの応用編が、ZOOMなどのオンラインミーティングで最後まで退室しない技術です。

最近はZOOMにも高度なマナーができあがっていて、会議が終わったからといって、ホストはぶちっと画面を切らないようになっています。徐々に人々が退室していって、大体みんなはけたかなという頃に、やっと画面が切断されます。

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このとき、友人の精神科医はカメラをオンにしたまま、かならず最後まで残るそうです。はたから見たら謎の人物なのですが、残りが2、3人になったとき、突然トークが始まることがあるらしいんですね。

その会議の感想とか、世間話とか、みんながいるときには話せなかったことが語り合われるわけです。

昔は廊下でやっていたんですよ。

「今日の会議長かったね」などと廊下で愚痴を言えたわけですが、コロナの時代にそれが難しくなっちゃったんで、ZOOMで最後まで画面オンにして残ることで代替しようという話です。

東畑 開人 臨床心理学者

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とうはた かいと / Kaito Tohata

1983年東京生まれ。京都大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。博士(教育学)・臨床心理士。専門は、臨床心理学・精神分析・医療人類学。白金高輪カウンセリングルーム主宰。著書に『野の医者は笑う―心の治療とは何か?』(誠信書房)『居るのはつらいよ―ケアとセラピーについての覚書』(医学書院)『心はどこへ消えた?』(文藝春秋 2021)『なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない』(新潮社)など。『居るのはつらいよ』で第19回(2019年)大佛次郎論壇賞受賞、紀伊國屋じんぶん大賞2020受賞。

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