認知症独居高齢者のコロナ罹患「訪問介護」の難題 ヘルパーの撤退続発、訪問看護へ円滑移行できるか

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その後、10日間の隔離期間中、訪問看護師が、ヘルパーに代わって、1日1回の内服介助や体調確認を行い、吉村さんは呼吸状態が悪化することなく過ごすことができた。発熱時に適切な医療機関の受診を促したヘルパーと、コロナ陽性の検査結果を受けて早急に訪問看護を手配したケアマネージャーの調整により、事なきを得た。

認知症のある独居高齢者がコロナ陽性となった際に、安全に自宅療養をすることは困難だ。感染症対策の専門知識のないヘルパーが訪問してコロナに罹患してしまったら、訪問介護事業自体が回らなくなる。自宅療養を継続できるようにするためには、感染対策のトレーニングを受けた訪問看護の導入が必要だ。

オンライン診療が有効

法律上、看護師は医師の指示がなければ動けず、訪問看護に入るためには、主治医の記載する訪問看護指示書が必要となる。コロナ陽性になるまで、訪問看護を利用していなかった場合、指示書を記載してくれる主治医を一から探す必要があるのだが、そこに困難さがある。

私自身はこうしたケースには、オンライン診療の活用が有効だと考える。オンライン診療の初診は対面で行うことが原則とされているが、できればオンライン診療の初診でコロナ陽性の診断を受け、訪問看護指示書を発行してもらえれば、訪問看護をスムーズに導入できる。

現状、PCR検査や医療用抗原検査キットの検査結果が陽性であれば、オンライン診療の初診でコロナ陽性の診断を受け、医療を公費で受けることが可能だ。流行時期によっては、症状でみなし陽性が認められる時期もある。

一方で、コロナの特例措置でオンライン診療の初診をしているクリニックは増えたようだが、訪問看護指示書まで記載してくれるところは見当たらなかった。実際に、コロナのオンライン診療の初診をしている医師は「在宅医療のことはよくわからないから、手を伸ばそうと考えたことがない」と話していた。

厚生労働省医政局医事課の通知において、オンライン診療で初診を行い、コロナ陽性の診断と処方を出す場合において、併せて訪問看護指示書を発行することは明文化されていない。ただ、厚生労働省に問い合わせてみると、医師の判断において必要に応じて特段の規制なく発行できるとの回答であった。

これが現状だ。すでにオンライン診療の枠組みはあるが、周知は徹底されておらず患者からのアクセスもしにくければ、診療報酬が安いためか医療機関側のオンライン診療の導入も進んでいない。第8波に向けて、患者にも医療機関にも周知が求められる。

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