アメリカ「中間選挙」気になるトランプの動向 バイデン大統領が抱えている課題は山積みだ

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リベラル派の多い都市部では抗議デモが相次ぎ、中絶を認めるよう訴え続けてきた民主党のバイデン政権にとっては追い風となった。バイデン氏自身も中間選挙で共和党が過半数を獲得し全米で中絶を禁止する法案を可決させた場合は拒否権を発動すると宣言している。

ただ、その後も物価高騰が続いていることで、この追い風が帳消しになってしまったとの見方も強い。最新の世論調査では、国家の課題として経済を挙げた人が3割超と最も多く、中絶については3番手の約5%にとどまっている。

共和党にとって2年後の大統領選を見据えた際に大きな不安要素となるのは、中間選挙に向けた各選挙区での党予備選でトランプ派以外の比較的穏健な候補が軒並み苦戦したことだ。

共和党の地盤の一つ、西部ワイオミング州で8月に行われた連邦下院選の共和党予備選では、トランプ氏批判の中心的な存在と全米でみられてきた現職下院議員のリズ・チェイニー氏がトランプ氏の推薦を受けた候補に大敗する象徴的な出来事があった。

リズ・チェイニー氏はブッシュ(子)政権で副大統領を務めたディック・チェイニー氏の娘で、高名な保守派政治家の一人だ。トランプ氏の“刺客”候補に大差で敗れたことで、共和党内には“トランプ的“な過激な言動に期待するトランプ氏の岩盤支持層が多いことが改めて表面化した。

退任後も話題が満載のトランプ

共和党にとって不安要素なのは、こうした過激な候補者が予備選は勝ち抜けても、リベラル派や中間層の票を取り込む必要がある本選で勝てるかどうか疑問が大きいことだ。予備選を楽勝したトランプ派候補は、中間票の取り込みが見込める穏健保守派の候補とは違って、本選ではトランプ的な言動が忌避されて苦戦する可能性が高いとみられている。

そのトランプ前大統領自身は退任後も話題に事欠かない。在任中からしばしば滞在していたフロリダ州にある自身の邸宅マールアラーゴに300件以上ともされる機密文書をホワイトハウスから持ち込んだまま退任後も保管していたことが発覚し、司法省による捜査を受けているほか、大統領選再出馬を見据えてしばしば開いている大規模集会で過激な陰謀論を訴える勢力「Qアノン」のテーマソングを流したり、Qアノンへの連帯を示すとみられる人さし指を頭の上に指すポーズを取ったりするなどスキャンダルまみれの状況は変わっていない。

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