アメリカ「中間選挙」気になるトランプの動向 バイデン大統領が抱えている課題は山積みだ

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バイデン大統領は「インフレ抑制法」と命名した歳出・歳入法を8月に成立させたが、赤字削減効果が出るのは5年後以降とみられることから、高インフレへの即効性はないとの見方が強く、中間選挙で追い風になりそうにはない。

中間選挙の結果、共和党が上院あるいは下院のいずれかで過半数を獲得するとの見方も強まっており、もしそうなれば、バイデン政権が提出する法案の成立は難しくなり、レームダック化が進む。

苦戦が続く中、バイデン政権が追い風と考えているのは、6月24日に連邦最高裁が出した人工妊娠中絶を認めない決定だ。

前政権下でトランプ大統領が次々と保守強硬派の最高裁判事を指名したことにより、アメリカの連邦最高裁は現在、9人の判事のうち6人が保守派となっている。このため、連邦高裁などでリベラルな判決が出ても、最高裁で覆されるケースが次々と起きている。

連邦最高裁の異例の判断

人工妊娠中絶の是非はアメリカの国論を二分する主要テーマだ。今回、保守派が過半数を占める連邦最高裁は、胎児が子宮外で生存可能になるとされる妊娠24週ごろより前の中絶を禁止できないとした「ローVSウェード」判決を実に約半世紀ぶりに覆す異例の判断を下した。

ローVSウェード判決は1973年、連邦最高裁が人工妊娠中絶を女性の権利として初めて認定した歴史的判断だった。南部テキサス州の妊婦が裁判でよく使われる仮名「ジェーン・ロー」を名乗って、ウェード地方検事を訴えたことから命名された。

テキサス州法で母体の危険がある時以外は中絶が違法なのは違憲だという妊婦側の主張に対し、当時の最高裁判事9人中7人が賛成した。アメリカではこれ以降、この判決を覆そうとする保守派による提訴が続き、何度も敗れてきた。その歴史的判決を覆したのが、トランプ氏が作った“保守派最高裁”だったのだ。

アメリカの保守層にはキリスト教原理主義者も多く、あらゆる中絶を「殺人」と主張する人も多い。一方で、女性の権利向上を訴えるリベラル派は犯罪被害などでの望まぬ妊娠ですら中絶を認めようとしない保守層に反発しており、今回の最高裁判断には激しく反発している。

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