長寿者が多い「5大地域」で判明した意外な共通点 "百歳人"に学ぶ元気で長生きするヒント

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「ブルーゾーン」という言葉は、ベルギーの人口動態学者ミシェル・プーラン博士がイタリアのサルデーニャ島に調査に入り、長寿者が最も多い地域を中心に地図上に青いインクで円を描いたのが始まりである。

その後、『ブルーゾーン』の著者ダン・ビュイトナー氏は、長寿者が多いとされる世界中の地域を訪れ、現地の研究者とともに、時間をかけて丁寧に現地での聞き取り調査を重ね、ついに特定したのが5つの地域──イタリアのサルデーニャ島、日本の沖縄、アメリカ・カリフォルニア州のロマリンダ、コスタリカのニコジャ半島、ギリシャのイカリア島である。

ダン・ビュイトナー氏は、ナショナル・ジオグラフィック誌の記者でありながら、世界6大陸を自転車で横断し、3つのギネス世界記録を有するなど、世界中を旅する冒険家の経歴を持つ。

長寿地域を訪れるうえで徹底的に統計データ、先行研究にあたり、その信憑性を吟味したうえで、現地調査に何度も赴き、現地の研究者、多くの100歳者と直接向き合う優れたフィールド科学者でもある。ビュイトナー氏は言う。「超長寿者が多いブルーゾーンには、何世紀、数千年にわたって培われてきた人類の経験が隠されている」と。

百歳人。英語では“センテナリアン”と呼ぶ。Century(センチュリー;一世紀)を生き抜いた人々という意味である。

その百歳人が何を食べ、何を日課にしてきたか、心がけていたことは何か。100年を過ごす中には、喜びも、怒りも、哀しみも、楽しみも、さまざまなライフイベントがあっただろう。それらをどう乗り越えてきたのか。自然と共生し、人と、地域と、どのようにつながってきたのか。一世紀をたしかに生き抜いてきた人々の、長い人生の中で培ってきた豊かな経験と知恵に触れること。これ以上の学びはないだろう。

キーワードは“つながり”TSUNAGARI

人の長寿要因は「社会とのつながり」が一番大きいことが研究報告されている[5])。ライフスタイル別での長寿への影響を比較した結果、「社会とのつながりの種類や量が多い」「社会とのつながりを介して受け取る支援が多い」という2つは「煙草を吸わない」「アルコールを飲みすぎない」「運動する」「太りすぎない」というよくある健康習慣と比べて長寿に強い関連を持っていることが明らかとなった。

この本で紹介されるブルーゾーンの長寿者たちは共通して家族とのつながり、友人知人とのつながり、地域社会とのつながりが強固で、お互いに支え合うことが精神的にも安定をもたらし、ストレスを減らし、そして生きる気力となっていた。

美しくも時に大災害をもたらす自然への畏敬の念と共生(自然とのつながり)、世代を超えて受け継いできたライフスタイル(先人の知恵とのつながり)、相互扶助、コミュニティー力(地域とのつながり)を大切にし、その結果、健康長寿を手に入れた。つながりが長寿の秘訣であることを医科学以前に身をもって実証した存在といえる。

コロナ禍を生きるわれわれにとって、生きるヒント、生き方のヒントとして、改めてつながりの大切さを教えてくれるブルーゾーンには、今こそ再び注目すべき価値がある。

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