投資で大損・退場する残念投資家が知らない3心理 行動経済学「学ぶ」「学ばない」は大きな差を生む

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例えば、10万円の利益を得たケースと10万円を失ったケースを想像してみましょう。金額はおなじ10万円ですが、10万円を失った時の嫌な思いを打ち消す喜びを得るには20万円の利益が必要になります。つまり、心理的な振れ幅は2倍程度となっているのです。

リアルにイメージできるようにもう少し想像を膨らませてみましょう。コツコツと数年間節約して貯めた貯金が300万円あり、将来のために資産形成をおこなおうと考え株式へ投資を決意したとします。

仮に株価が50%上昇して450万円になると大きな喜びがあるかもしれませんが、投資方針を左右するようなインパクトはないでしょう。しかし、逆に50%下落し150万円になったとします。今度はどうでしょうか。苦労して貯めたお金が半分の価値になってしまったのです。株式投資などやめてしまおうと思わせるくらいの影響があるのではないでしょうか。

このような心理的な影響を理解せずに株式投資を続けていると、その値動きの大きさから相場に翻弄されることも多々あるでしょう。最悪の場合、精神的負荷に耐えられなくなって、株式投資をやめてしまうということもあり得ます。

その一方で、損失時には心理的な影響を大きく受けることを知っていれば、大きな武器になります。暴落が発生した時に、他の投資家が相場に翻弄されている中で、冷静に対処でき、それは将来のリターンを高めてくれるでしょう。

ここでは、そのような「行動経済学」と呼ばれる、相場で生き残るための大きな武器を学んでいきましょう。

ダニエル・カーネマンの「プロスペクト理論」

行動経済学は、伝統的な経済学に心理学的な要素を取り入れて考察する学問です。なかでも、株式投資について情報発信しているTwitterやブログでよく取り上げられているのが「プロスペクト理論」です。

プロスペクト理論はダニエル・カーネマンとエイモス・トヴェルスキーによって展開された理論で、この研究成果により、ダニエル・カーネマンは心理学者でありがなら、ノーベル経済学賞を受賞しています。

このプロスペクト理論について、カーネマンの著書『ファスト&スロー』(村井章子訳、早川書房 2012年)では、次の3つの特徴があるとされています。

1.参照点依存性

2.感応度逓減性

3.損失回避性

一つひとつ確認していきましょう。

次ページ参照点依存性とは?
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