弁護士ドットコム元榮氏「電子契約を根付かせる」 参院議員から経営復帰して気付いた自分の使命

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――電子契約サービスの「クラウドサイン」がコロナ禍でのリモートワークの普及もあって好調です。

おかげさまでクラウドサインは、導入企業数、契約送信件数が、月次・累計ともにユーザーの導入数でナンバー1のサービスに成長した。ありがたいことに、金融や不動産では大手の財閥系企業、行政では東京都と、業界をリードする企業・団体にも導入いただいている。

ただ、導入率は飛躍的に増えているが、導入した企業における利用率はまだ低い。各企業内では現場の一部での使用にとどまっており、当社データに基づく上場企業の電子契約利用率の平均は1.2%程度に過ぎない。政府が掲げるDX推進によるわが国の生産性向上のためにも電子契約の利用率の向上は急務だ。

今後は「電子契約といえばクラウドサイン」と、この分野の代名詞としての地位を一層盤石なものにしていきたい。ただ、現行のサービスは「作成・レビュー・締結・管理」の4段階ある契約ライフサイクルマネジメントのうち、「締結」にしか対応していない。すでに契約の「管理」のサービスは今年8月にリリースしたが、今後はこの契約ライフサイクルマネジメント全体を網羅したプロダクトの開発にも取り組んでいく。契約をより身近に、有益に活用してもらうためのプラットフォームとして、クラウドサインにはまだ成長のポテンシャルがある。

――そのほかに自社で今後注力していく領域はありますか。

これまで培ってきた(クラウド経由でソフトを利用する)SaaSの育成ノウハウを活かして、社会を変えるようなSaaS事業を新規で立ち上げることを考えている。また、「弁護士ドットコム」だけでなく「税理士ドットコム」「ビジネスロイヤーズ」など、他の専門領域にも大きな可能性がある。今後の超高齢化を見据え、医療・健康分野の新規事業にも選択肢の1つとして取り組んでいきたい。

永田町での経験を糧に「兆」の世界めざす

――2016年、弁護士ドットコムを上場した直後のタイミングで、参議院選に出馬したことが大きな話題となりました。あらためて参議院議員の6年間から得られたものは何ですか。

1人でも多くの票を頂くため、都市部から郡部まであらゆる地域を周り、あらゆる年代や職業の方々と会った。「日本にはさまざまな人が暮らしているんだ」という当たり前のことを知り、それまで自分が経験してきた世界の狭さに気付かされた。そのなかで、「国家百年の計」という長時間軸で日本を俯瞰するような視座が得られ、国家観や公共心が大きく培われた。

――参議院議員の経験をふまえ、今後の経営者としての抱負を教えてください。

永田町や霞が関には優秀で情熱的な人がたくさんいて、よい国を、よい社会をつくろうと奔走している姿を見てきた。今度はその人たちと連携しながら、民間の立場から日本の成長戦略を担っていきたい。AIや量子コンピューティングなど最新のテクノロジーを駆使しながら、われわれにしかできないインパクトのある企業を創っていく。

売上高100億円も視界にとらえているが、もちろん通過点にすぎない。めざすのは孫正義さんのいう「丁」「豆腐屋」=兆円の世界だ。イーロン・マスク氏だってジェフ・ベゾス氏だって、当たり前に「兆」の売上高や企業価値をつくっている。同じ人間がやれることだから自分にやれないことはない。

「もう1度経営の世界に戻らせてください」と2度目の出馬を辞退した際にも、永田町の方々が本当に優しく送り出してくれた。その永田町を離れ、こうして経営に専念させてもらっているからには、それだけの大きな社会貢献を成し遂げなければ応援してくれた方々に申しわけない。

弁護士で起業する前例がない時代に起業する、会社を上場した直後に選挙に出馬する――そういう大胆なことができる自分だからこそ、果たしうる貢献の形があるし、使命があると思っている。

堀尾 大悟 ライター

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ほりお だいご / Daigo Horio

慶応大学卒。埼玉県庁、民間企業を経て2020年より会社員兼業ライターとして活動を開始。2023年に独立。「マネー現代」「NewsPicks」「新・公民連携最前線」などで執筆。ブックライターとしても活動。

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