その彼らがAI音声対話アバターを開発したのは、新型コロナによる大きな影響があったためだ。電話やメール、チャット、SNS、アプリなどさまざまな通信手段に対応するオムニチャネル化が進んでいたとはいえ、ステイホームによってスタッフのコンタクトセンターへの出勤がままならなくなってしまった。
「そこで2020年から、メタバースが新たな顧客接点になりうるかということを考え始めました。しかしメタバース下でコンタクトセンター事業そのものを行うとなると、メタバースのプラットフォーム側の制約にかなり縛られるため難しかったんです。ではほかのメタバースの利用方法はないかと考えたときに、アバターならお客さんと会えるし、お客さんも店舗のなかにいるような感覚で問い合わせができる。これは新たなチャネルとしてメタバースを活用できるのではと考えました」(今宮氏)
複数のプラットフォームで活用できる技術
開発を担当した同社の鈴木亮太氏も、メタバースではアバターを介して多くの人と別け隔てなくコミュニケーションができる点に着目したという。
「現実の店舗や駅構内などのサイネージで使えるAI対話システムは、なんだか気恥ずかしく感じてしまってしゃべりかけるのに心理的なハードルがあったんです。でも昨年の冬くらいから個人的にVRChatに触れる機会があり、誰とでも話せることから、AIとユーザーが同じ立場になれる空間ではないか、と考えました」(鈴木氏)
AI音声対話アバター「AI Avatar AOI」のデモンストレーションも、メタバースサービスのVRChatを用いて行われた。発表会会場にいたのは女性の姿でデザインされた「AI Avatar AOI」。アバターの周囲には応対できる会話候補が表示されていたが、ほかの問いかけでも立派に反応してくれたし、この会話候補は非表示にすることもできる。またVRChatの仕様上、アバターのデザインを変更するのも簡単だ。性別や年齢、種族も含めて働く場所に合わせて自由にコントロールできる。
「VRChatをはじめとしたメタバースは、さまざまなアバターでさまざまなワールドを渡り歩いてゆけます。アバターの外観を自由に選択するという部分でも、さまざまなワールドを自由に案内できるという設計も、ソーシャルVRの文化を尊重したいという考えがありました」(鈴木氏)
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