不登校の子どもが「大学受験」で注意すべき要点 勉強に入る前の段階でつまずきポイントがある

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石井:もちろんあります。アルバイトをするなかで頭角を現して、仕事ぶりが評価されて社員としてスカウトされるというケースも聞いたことはありますね。ただ、こういう事例は私たちの世代ではよくあった話ですが、最近の子たちは、通信制高校が充実してきたこともあって、高校卒業の資格をまずは取る、という人が増えているなという感覚はあります。

安田:僕の場合がそうですが、人間関係を構築することが苦手なケースだと、例えば大学卒業資格を得るとか、何かしらの免許・資格を取ることが仕事につながる場合もあります。学ぶ場所の選択肢が増えているということは、社会全体でいい方向に向かっているなと感じています。

石井:自分に合う将来を見つけるためのツールに学歴・学び直しがあったり、コミュニケーションスキルがあったりするわけです。何が自分にとって無理なく続けられることなのか? を正しく理解することがやはり大切ですね。

保護者が心がけたい伴走の姿勢とは

──“自分に合う”進路を摸索するということが、要だったかと思います。傍で見守る保護者としては、本人が“自分に合う”進路を見つけるために、どのような働きかけをするといいのでしょうか。

安田:不登校という状況にあるときに、何かプレッシャーをかけてもいい方向にはいかないです。学校に強制的に行かせようとしたり、学校に行かないことは悪だという思考の人と触れ合うような環境に身を置かせたりということは、控えたほうがいいと思います。

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石井:そうなんですよね。不登校になるということは、その人にとって、不登校という期間が必要な時間だということなんですよ。だから、その必要な時間を無理やり奪ってはいけない。

安田:そこに関わる話で言えば、中高年のひきこもりに関する調査を見ると、10代から継続して10年も20年もひきこもっているというケースは、最近では意外と少ないです(※2)。

だから、あまり保護者側が深刻になりすぎずに、「今この時間が必要なんだ」という気持ちで本人を追い込まずに受け止めてあげるのがいいと思います。保護者自身にとっても、それくらいの心の余裕があるほうがいいと僕は思います。

石井:そうですね。例えば僕を見て、「この人は不登校だったんだ」と見た目では判断しないだろうと思います。10年後には何もなかったかのように過ごしていることを想定して、安田さんがおっしゃるように「心の余裕」を持って接することがいちばんいいのではないでしょうか。

※2……令和元年版 子供・若者白書「特集2 長期化するひきこもりの実態」

安田 祐輔 キズキ共育塾代表

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やすだ ゆうすけ / Yusuke Yasuda

1983年横浜市生まれ。不登校・中退・ひきこもり・うつ・発達障害・再受験など、もう一度勉強したい人のための個別指導塾「キズキ共育塾」などを経営するキズキグループ(株式会社キズキ/NPO法人キズキ)代表。発達障害によるいじめ、一家離散、暴走族のパシリ生活などを経て、偏差値30からICU(国際基督教大学)教養学部国際関係学科入学。卒業後、大手商社を経て2011年に「キズキ共育塾」開塾。2018年6月現在、全国に5校(代々木・池袋・秋葉原・武蔵小杉・大阪)。著書に『暗闇でも走る 発達障害・うつ・ひきこもりだった僕が不登校・中退者の進学塾をつくった理由』(講談社)。

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石井 志昂 『不登校新聞』編集長

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いしい しこう / Shiko Ishii

1982年東京都生まれ。中学校受験を機に学校生活が徐々にあわなくなり、教員、校則、いじめなどにより中学2年生から不登校。同年、フリースクール「東京シューレ」へ入会。19歳から日本で唯一の不登校の専門紙である『不登校新聞』のスタッフとなり2006年から編集長、2020年からは代表理事も務める。これまで不登校の子どもや若者、親など400人以上に取材し、女優・樹木希林氏や社会学者・小熊英二氏など幅広いジャンルの識者に不登校をテーマに取材を重ねる。「あさイチ」「逆転人生」(NHK)「スッキリ」(日本テレビ)「報道特集」(TBS)などメディア出演多数。不登校新聞社が編著書として関わった書籍に『学校に行きたくない君へ』(ポプラ社)などがある。

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