不登校の子どもが「大学受験」で注意すべき要点 勉強に入る前の段階でつまずきポイントがある
安田:欠席日数が多いこと自体は大学側に情報として提供されますが、それで合否が決まることはないと言えると思います。一般選抜に限らず、総合型選抜であったとしても卒業資格さえあれば受験することが可能なので、欠席日数だけで合否が決まる訳ではないと言えます。
石井:少し前の調査なので今はもっと増えていると思うのですが、不登校経験者のうち、20歳段階で約2割の人が大学に在学しているというデータもあります(※1)。不登校だからといって大学に行けないわけではないし、入学が著しく遅れるわけでもない。1~2年遅れたとしても一般的な浪人と変わりません。
このような正しい情報を知っていることがまず大学受験を志す最初の段階では重要になるんでしょうね。一方で、理論上受験は可能だとは言え、具体的な勉強のやり方を知らなければ、合格することは難しいと思います。「いきなり独学で勉強してもうまくいかない」という話がありましたが、具体的にどういう状況を指すのでしょうか?
※1……平成26年「不登校に関する実態調査」 ~平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書~(概要版)
勉強以外でも「つまずきポイント」を解消すること
安田:よくあるのは、いきなり難しい問題演習から入ろうとして、「できない自分はダメなやつだ……」と落ち込んでしまってメンタルダウンして勉強できなくなる、というパターンですね。ほかにもいきなり1日10時間勉強しようとするなど、現在の自分の力量に対して負荷をかけすぎて落ち込む、という。
石井:勉強に入る前の段階ですでにつまずきポイントがあるということですね。
安田:そうなんです。だから、僕の場合は、「机の前に座れた」「塾に行くことができた」ということをまず頑張ったポイントとして認めてあげる、というところからスタートします。遅刻したとしても、「通塾できたことがスゴイ」というところから始めます。その後、時間どおりに来れたとか、授業に集中できたとか、少しずつステージを上げていく感じです。
石井:いわゆるスモールステップというやつですね。不登校から大学受験をするためには、「何を勉強する」ということ以前に「勉強するというステージに立つ」ことを丁寧にサポートしていくことが重要だと理解しました。
安田:ただ、「塾に行けてよく頑張ったね」ということを何年も続けていても仕方がないので、勉強の姿勢に入ることができたら、その次は「今の自分の学力に見合うレベルの学習に取り組む」ことが大事です。
やはり「続けられること」が大事なので、「自分が理解できていると思う1つ前の段階から復習する」ことをおすすめしています。解けない問題にばかり取り組んでいると、とくに学び直し初期はモチベーションが維持できないからです。