高瀬:きっと膨大な取材の中からこの3家庭を選んだことに意義があるし、すごくバランスがいいし、最後にあの「解説」があるからこそ、3つのエピソードが大きな1つのメッセージに昇華されていきますよね。その構成力がすごい。「みんな読んだほうがいいよ!」って言いたいです。
おおた:でも、今回話を聞かせてもらった3家庭は、たくさんのおうちから選抜したわけじゃなくて、本当に1本釣りなんですよ。
朝比奈・高瀬:え! あ! そうなんですか! すごい。
おおた:当初は7家庭ぐらい取材しようと思っていたんですけど、3家庭取材した時点で、これで十分じゃない? みたいな。それぞれのエピソードが単体としてありながら、でも3つを通して読むことで、それぞれの意味や見え方が変わってくる面があるかなって思います。
特にエピソードⅡのところが、中学受験の怖さの極みです。でも僕の筆力だとエピソードⅡだけを物語にしても、それを十分に表現しきれません。前後のエピソードとの対比を利用することで描けた部分は大きいと自分でも思っていますね。
中学受験の成功は本人や家族の満足度
高瀬:どうしたら満足のいく中学受験になるのかを考えさせられる作品だと思いました。おおたさんがよく言う最後に笑うという意味での「笑者」になることが大事っていうのは、私も漫画を描きながら本当に思っていることです。「中学受験の成功っていうのは、本人や家族の満足度なんだ」っていうのを繰り返して言っていかないと。
朝比奈:誰かにとっては切望している第一志望でも、誰かにとっては滑り止めだったりするんですよね。全員が第1志望で入ってくる学校なんてほとんどないかもしれないのに、そこに行けた子どもだけを「勝者」と呼ぶのだとしたら、本当に残酷すぎる世界で……。