中学受験の「弱肉強食」子供巻き込むいびつな構造 成績優秀者の塾代をその他の受験生が負担!?

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おおたとしまさ
おおたとしまさ/教育ジャーナリスト。著作は70冊以上。近著に『勇者たちの中学受験』(大和書房)がある

おおた:そういうことなんですよね。要は力を持ってる者がますます搾取していいっていう原体験を12歳にさせちゃうってことになるわけで。

高瀬:おそらく搾取っていう自覚もないですね。この「解説」を読んだ時に、搾取してるとかされているとか、その想像も意識もせずに、搾取する側に回っていく世の中の構造が、こんな塾みたいな小さな場所で行われてるんだと思って、背筋が寒くなりました。

朝比奈:本当に、そのとおりだと思います。そういう構造があること自体、広くは認知されていないですよね。

子どもが何を受け取っているか

おおた:そういう私だって、同じ立場だったらラッキー!って思っちゃうかもしれないのも真実で……。

高瀬:どこかでやっぱり、ちょっと誇りに、それはおごりと紙一重ですけど、思うはずで。もしそういう優秀な子どもを持った時に、はたして「うちの子は優秀だから当然よね」と思わない自信があるかって言われたら、私にもないので……。

勇者たちの中学受験~わが子が本気になったとき、私の目が覚めたとき
『勇者たちの中学受験~わが子が本気になったとき、私の目が覚めたとき』(大和書房)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

朝比奈:わが子が優秀だからという気持ちももちろんあるでしょうけれども、それ以前に、あと何日だから、利用できるものは何でも利用しようっていう気持ちもあるかもしれませんよね。

おおた:そりゃそうですよね。だから渦中において、それを利用するっていうこと自体は責められない。ただそこで、やっぱり子どもが何を受け取っちゃってるのかっていうところには、親の責任として自覚的になってほしい。その分どっかで泣いてる子がいるかもしれないっていうことは、中学受験を終えてからでいいと思いますけど、やっぱり親子で話す必要があると思いますよね。

そうすることで、必死な中で期せずして受け取っちゃった毒を中和することができると思います。毒を毒とも感じないほどに、渦中にいると感覚がマヒしてしまいますからね。

中編に続く、11月12日配信予定

おおたとしまさ 教育ジャーナリスト

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Toshimasa Ota

「子どもが“パパ〜!”っていつでも抱きついてくれる期間なんてほんの数年。今、子どもと一緒にいられなかったら一生後悔する」と株式会社リクルートを脱サラ。育児・教育をテーマに執筆・講演活動を行う。著書は『名門校とは何か?』『ルポ 塾歴社会』など80冊以上。著書一覧はこちら

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高瀬 志帆 漫画家

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たかせ しほ / Shiho Takase

代表作に『二月の勝者-絶対合格の教室-』(小学館)、『おとりよせ王子 飯田好実』(コミックゼノン/徳間書店)などがある。

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朝比奈 あすか 小説家

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あさひな あすか / Asuka Asahina

中学入試の問題文としても頻出。中学受験をテーマにした作品に『翼の翼』がある。(c)松蔭浩之

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