実名で中学受験の生々しさを描いた理由
おおたとしまさ(以下、おおた):この3人でお話ができたら素敵だなって、実は前々から思っていました。『勇者たちの中学受験』(大和書房)は、今までの僕の本とは表現方法がちょっと違うのですが、実はおふたりからインスピレーションをいただきました。僕には漫画は描けないし、小説も書けないし……。だけど、ノンフィクションの物語だったら書けるかもと思って。
朝比奈あすか(以下、朝比奈):こんな精緻な取材がよくできたなって驚きました。学校名が全部実名で出ているし、受験生や家族の各学校に対する考え方とか志望順位とか、そういったものまで生々しく書かれていて、ここまで書いちゃっていいのかな? と結構ハラハラするような気持ちで読みました。
高瀬志帆(以下、高瀬):私もほぼほぼ、同じ印象です。逆に質問になってしまうんですけど、おおたさんが今回ここまで生々しく書くのは、何かの覚悟がおありなんですか? 学校名もそうですが、塾名も実名で、かなり批判的なことまで書かれているので、驚きました。
朝比奈:私もすごく切り込んでいるなと思いました。このやり方はよくないなって、私が思ってたことが、結構書かれていたので……。
おおた:これまでの取材経験の蓄積があったから「あ、これやっぱり構造的に問題あるな」って確信が得られて、実名で書くことにしました。でも、今回何か特別な覚悟があるのかと言われたら、それほどでもありません。ノンフィクションである以上、当然のことだと思っています。
朝比奈:フィクションでは思っていても書けないことを、ノンフィクションだからこそ書き切っていますよね。でも、中学受験のカルト性というか異常性を表すために、そしてノンフィクションである以上、必要不可欠なんだと、おおたさんご自身が書かれている「解説」を読んでわかりました。