財輸出は今後伸び悩む可能性が高い。2020年後半から2021年前半は財消費のペントアップ・デマンドによって輸出は大幅に増加したが、当時は中国向け輸出が牽引役となっていた。しかし、足元ではゼロコロナ政策や不動産不況などの影響により中国の内需は落ち込んでおり、中国向け輸出の回復は期待できる状況にない。加えて、2023年にかけてアメリカをはじめ世界経済は減速する見込みである。世界的な需要減少により、輸出は伸び悩むだろう。
円安の恩恵が期待されるが、今次局面では世界経済の成長率が鈍化しながら円安が進んでいる。これまでは世界経済の回復とともに、低金利通貨の円が売られることが多かったため輸出を増やしやすかった面がある。円安のメリットも限定的となるだろう。
人手不足でインバウンドの本格回復は2023年から
日本経済のアップサイドとしては、インバウンド(訪日外国人)による消費の回復に期待がかかる。インバウンドがコロナ前の水準に回復した場合、最低でも当時の消費額5兆円程度は期待できるだろう。
しかし、供給側の制約がボトルネックとなることが懸念される。日本銀行の短観9月調査によると、「宿泊・飲食サービス」などの対面型サービス業では人手不足感が強い。「宿泊・飲食サービス」はコロナ前から人手不足が常態化していたが、当時の就業者数の水準はかなり高かった。すなわち、コロナ禍以降に就業者数が減った状態で当時の需要が発生すれば、供給制約はかなり強いものとなるだろう。
この点について、やはり関係者からは「業界のマンパワーはコロナ前より3割ほど減っていて、すべての需要に対応できない状況」(日本旅行業協会の與座沖縄支部長、朝日新聞)との声があがっている。加えて、「車両台数は足元で2019年と比べて約3割減」(沖縄県レンタカー協会の白石会長、日経新聞)と、観光インフラも傷んでいる状態。
供給能力の回復には時間がかかるとみられ、インバウンド回復の本格化は2023年以降だろう。「おもてなし」は1日にしてならず、である。
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